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竹書房『まんがライフセレクション 動物のおしゃべり♥増刊号 神仙寺瑛スペシャル』

増刊号。神仙寺瑛「動物のおしゃべり♥」「天使の事情」の再録+番外編的描き下ろしを収録。併載作品もほぼ描き下ろし。併載陣は,生藤由美,桑田乃梨子,吉田仲良,富永ゆかり,いわみちさくら,ふくやまけいこ,伊藤黒介,ビビック(掲載順,敬称略)。

今日は増刊号にかこつけて,私の「動物のおしゃべり♥」に対する拭えない違和感を説明するために真面目な話でも続けましょうか。

神仙寺氏の二作品に共通するのは「(言葉を使う人間と)言葉での意思疎通が出来ない者たちの意思の描写」,異なるのは「〈視点〉の推移の有無」です。「天使の事情」で描かれる大人と赤子は,言葉での会話は無理でも共に人間です。つまり,両者は同じ視点を持っています。対して「動物のおしゃべり♥」は人間と動物の間で(基本的には)意思疎通不可能なだけでなく,動物が本来の姿だけでなく人の姿で描かれることがあります。

「動物のおしゃべり♥」は,動物がとる言動を動物の姿と人間の姿の両方で描き,そのギャップによりおかしみを生み出しています。単行本1巻11ページのハトの一本(=新人賞受賞時の作品紹介に用いられた一本)がその典型です。このおかしみを実現するために,動物とおしゃべりできるミカちゃんが,言動の説明役として用いられます。

ここで気をつけたいのは,彼女は動物とおしゃべりができるだけでなく,動物が人間の姿に見えている(あるいは作者が読者にそのように思わせている)点です。すなわち,動物が人間のように見えたらそれは〈ミカちゃん視点〉,動物本来の姿なら(ミカちゃんのように特殊でない)〈人間視点〉です。言いかえれば,私たちは〈ミカちゃん視点〉を通して,動物たちが人間のように描かれる世界を見ているとも言えます。

さて,本誌をお持ちの方は97ページを開いて下さい。最後の2コマに違和感を覚えませんか? あるいは単行本1巻をお持ちの方,10ページのタローくんの一本はどうですか? 少なくとも,私は違和感を覚えます。「なぜ動物(人間)が突然消えて,人間(動物)が突然現れたのか!?」と。

これは〈視線〉と〈視点〉で説明できます。結論から言うと「同じ〈視線〉のまま〈視点〉が移り変わっている」からです。本誌97ページの場合,最後の2コマは共に動物たち&ミカちゃんを正面から見る〈視線〉です。しかし,本来の姿の動物たちとミカちゃんが並ぶ前のコマは〈人間視点〉なのに対して,大人な人間の姿をした動物たちが並ぶ後ろのコマは〈ミカちゃん視点〉です。同様に,1巻10ページの場合,3・4コマ目ともタローくんの後ろから二者を眺める〈視線〉ですが,3コマ目が〈ミカちゃん視点〉,4コマ目が〈人間視点〉です。

「コマの中にミカちゃん自身がいるのに〈ミカちゃん視点〉はありえない」とおっしゃる方がいらっしゃるかもしれませんが,私は〈~視点〉という言葉を「~から見える『はず』の世界」という意味で使っています。件のシーンでミカちゃんの目だけが宙に浮いて,正面(あるいはタローくんの後ろ)から自分自身を見返したら,きっとこのように見えるはずですよね。一方,〈視線〉という言葉は,文字通り「目が向いている方向」という意味で使っています。

ではなぜ「同じ〈視線〉のまま〈視点〉が移り変わっている」と(少なくとも私は)違和感を覚えるのか。それは,この作品を読んでいる私が,作中の誰に移入すればいいか混乱してしまうからだと考えます。〈視線〉による無意識の同一化が〈視点〉によって妨げられる,とでも言いましょうか。アイデンティティクライシス,なんて言葉は大袈裟すぎますが,少なくとも作中の世界を見る〈目〉を誰に託しているのか分からなくなってしまうわけです。

本来ならばおかしみを生み出すためのプラスの技法が,読者の(少なくとも私の)読みを阻害してしまうマイナス要素になってしまっているのが,この作品が「読めない」原因だと思っています。理屈でこう分かっていて読んでも「読めない」んですよ。それほど作品世界を見る〈目〉ってのが重要なんだなと思いました。

ちなみに,動物との意思疎通可能な存在をバッサリ切り落として,〈動物視点〉と〈人間視点〉と〈視線〉を組み合わせた詐術を繰り広げるのがカザマアヤミ氏だと思ってます。「ちょこっとヒメ」に感じる猫ラブやケモノ耳萌え以上の何かは,おそらくこういった言葉で説明できると考えています。その話については別の機会に。

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コメント

#440: Re: 竹書房『まんがライフセレクション 動物のおしゃべり♥増刊号 神仙寺瑛スペシャル』

さくらが猫タローが犬で人間の姿で話したり中学生のお兄さんが動物が大好きでサクラたちの為に服を作り散歩をしたり体に傷をつけながらも行動する姿がいい

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