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カザマアヤミ『ちょこっとヒメ(1)』/ガンガンウイングコミックス/スクウェア・エニックス

カザマアヤミ『ちょこっとヒメ』1巻

この作品は,今年の4コマ作品の中で,最も大きな収穫のひとつだ。

「ちょこっとヒメ」は,スクウェア・エニックス『ガンガンWING』にて連載中の4コマ漫画。飼い主の所を飛び出し,迷子になってしまった仔猫,ヒメと,彼女を拾い,自分の家で飼うことになった少年,ナベ,そしてその周囲の人間や動物の日常を描いた作品。ただし動物キャラは,時と場合に応じて,その本来の動物の姿と,擬人化された猫耳少女などの姿の2通りで描かれる。作者のカザマアヤミ氏は,これが自身初の単行本となる。

一目見ただけで惹かれる可愛さ

この作品,まず目を惹かれるのは,淡いタッチで描かれたキャラ絵だろう。とにかく絵が上手い。そして可愛い。擬人化された動物たちの大きな瞳,やわらかな体のライン,豊かな喜怒哀楽の表情は,それだけで可愛さのあまりに悶えてしまう。

もちろん,絵が可愛いだけではない。キャラのセリフ,行動,その全てが可愛い。飼い主の手の上で安心しきった表情でお休みする姿,動物たちの間でじゃれあったり毛づくろいをしあったりする姿……。どれも見ていて和まずにはいられない。

既存の萌え4コマとは一線を画した快感 - 女の子的感性

その中でも特筆すべきは彼女たちの会話と,その中心にいるヒメの存在だろう。彼女は臆病だけど好奇心旺盛な猫だ。そして無邪気で,ちょっぴり大人ぶっていて,ひたすら女の子だ。彼女のセリフをふたつ引用しよう。上はヒメが道端の捨て犬(後に彼女は,後述するくっきーと分かる)と仲良くなった後,別れる時のセリフ。下はナベの家から外を眺めるヒメのセリフだ。なお,強調部は引用者による。

ワンチャン とってもやさしかった! いいことしった! ひとつアダルトになりました!!

カザマアヤミ『ちょこっとヒメ』1巻 p.11「なかよくなった」

さいきんのヒメは おそとをながめるのに ときめきをかくせません

くもがうごいたり はっぱがゆれたり とってもたのしいんだよ!

カザマアヤミ『ちょこっとヒメ』1巻 p.25

強調部に注目して欲しい。正直,ちょっと変わったセリフだとは思わないだろうか。私はこれらのセリフに,作者の女の子的感性を見る。事実,作者は女性なのだが,私がここで述べる「女の子的感性」は,「女性的感性」とは微妙に異なる。

例えて言うなら,女の子が数人集まっておしゃべりをするさまに似ているとでも言うべきか。背伸びしたいお年頃,目まぐるしく変わる会話のテンション,言葉の雰囲気を重視した会話のやり取り。彼女たちのセリフや,コマ内で多用されるハートマークからは,これがひしひしと感じられる。そしてこれが実に心地いい。

その心地よさも,実は彼女たちの戯れを見守る立場からのものではない。4コマという定形式で次々と繰り広げられる彼女たちの会話に,私たちはいつの間にか彼女たちの中に入り込んでいるのだ。この点で,この作品は既存の萌え4コマとは一線を画す。既に私たちは彼女たちの傍観者ではない。彼女たちそのものなのだ。

そして,以上の全ての要素が合わさったとき,そこから生み出される快感はすさまじい。ほんわかどころの話ではない。まるで脳が焼けつくような感覚だ。これには,男のくせになぜか女の子的感覚を強く受信してしまう,自分のアンテナにも原因があるかもしれないが――

それでもやっぱりあなたが好き - サブキャラの微妙な心理の面白さ

ヒメ以外のキャラにも目を向けてみよう。単行本1巻では,メインキャラとして,3組のペットと飼い主が登場する。まず,先述したヒメとナベ。次に,プライドの高いペルシャ猫,しろこと,その飼い主の大川陽太。最後に,ぼーっとした仔犬,くっきーと,その飼い主の坂下朝生(ともき)・莉夕(りゆ)兄妹だ。ちなみに坂下兄妹は双子である。

しろこと陽太はちょっと変わった主従関係だ。陽太は,その穏やかな表情とは裏腹に,しろこに対する愛情にはどこかサディスティックなものが感じられる。一方のしろこは,陽太のちょっと行き過ぎた愛情に困惑気味という感じ。しかもプライドが高く,陽太のことを逆に飼っているんだと思っている節がある。

一見でこぼこに見える彼女らだが,実はまんざらでもない。しろこは何だかんだ言って陽太のことを信頼しているし,陽太の態度の裏には,好きな女の子だからいじめたくなる,あの心理があるのだ。残念ながら1巻には,それを裏付ける彼らのエピソードが載っていない。これは2巻を楽しみにしていただきたい。

くっきーと坂下兄妹の方は,まず兄妹のやりとりに目が行く。妹の莉夕は双子なんだから一緒だっていーじゃん 私たち一緒なの!! と,兄にべったり。対する兄の朝生は,そんな妹のべったりぶりにちょっとうんざりしている感じ。

ここにくっきーが入ると,三者の関係が面白くなる。くっきーをストレートに溺愛する莉夕と,同じく飼い主バカだけど,妹の前ではくっきーに対して素直になれない朝生の姿が見えるようになる。くっきーはそんなのどこ吹く風で,いつでもほんわりしている。この微妙な関係が面白く,なぜかちょっと恥ずかしい。

まとめ

可愛くて個性的なキャラたちが繰り広げる日常を描いた,肩を張らずに読める作品。4コマ好きも,ほんわか系漫画好きも,猫耳好きも楽しめる作品だろう。全てに当てはまるなら間違く楽しめるだろう。

『ガンガンWING』では先日,小島あきら「まほらば」が最終回を迎えた。「ちょこっとヒメ」はその後釜として,4コマ作品ながらも,主力を張れるだけのポテンシャルがある作品だと思う。今後の連載にも期待したい。

補足,関連情報

単行本1巻には,「ちょこっとヒメ」の前身である「365日猫(ヒメ)!」も収録。こちらは『ガンガンWING』2005年7月号付録『4コマエディション』,および2005年9月号に掲載された作品。【追記(8/30 20:21)】単行本に収録されているのは『4コマ』エディションの方のみ。『4コマエディション』から本誌に連載化された作品はこの作品のみ。余談だが,『ガンガンWING』にはそろそろまたこういう付録企画をやって欲しいなと,私は思っていたりする。

アニメイトゲーマーズとらのあなでは,単行本発売を記念したフェアを開催中。単行本購入者には,それぞれ作者描き下ろしの,ヒメ,しろこ,くっきーのメッセージペーパーを配布。また,各店とも,同日発売の『ガンガンWING』9月号購入者にもポストカードを配布するなどの関連フェアを同時開催。とらのあな一部店舗では「ちょこっとヒメ」の複製原画展も開催中。また,作者のブログによると,作者のご当地である埼玉県の17店舗の書店でもフェアを開催。こちらでは三匹編のメッセージペーパーが配布される模様。詳細はそれぞれのリンク先を参照。

「ちょこっとヒメ」で作者に興味を持たれた方は,9月12日にモビーダ・エンタテイメントから発売の『月刊少年ブラッド』10月号を読んでみるといいかもしれない。同号には作者の読み切りストーリー漫画「ラストプラトニックブルー」が掲載予定。これは同誌創刊号に掲載された「キミに魅せる空」と同じシリーズの作品。

さらに興味を持たれた方は,作者のデビュー作を読んでみて欲しい。「ちょこっとヒメ」は作者の初単行本作品だが,デビュー作ではない。デビュー作は,『ガンガンWING』2003年10月号に,第2回スクウェア・エニックスマンガ大賞 佳作+審査員特別賞受賞作品として掲載された「かさぶたさん」だ。こちらは思春期の少女の少年に対する憧れを丁寧に,そしてコミカルに描いた作品。また,『ガンガンWING』2004年5月号には,第二作「その島のお話。」が読み切り掲載されている。両誌とも国立国会図書館に蔵書されているので,機会があったら読んでみて欲しい。

【追記(9/8 1:31)】他の方々の感想へのリンクは以下の通り。

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