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子供に対する想像力に支えられた温かい物語――楠美マユラ『お母さんは水の中 ぴよ』

きんぎょとひよこの親子の物語、2年半ぶりの待望の続刊にして全ページ描き下ろし。連載誌『ハムスペ』『あにスペ』が既に休刊していながら続刊が刊行されたことに、まずは作者および編集者を始めとする関係者の方々に感謝したい。続刊ながらも、第一話としてキャラ紹介が掲載されているため、今巻から読んでも問題ないだろう。

今巻は、ひよこの子供心の描写が心を打つ。例えば第二話、きんぎょが読んでいるキャラ探し絵本(ウォーリーをさがせ!のようなもの)に、ひよこが鉛筆で答えをマルつけしてしまうエピソード。ひよことしては良かれと思ってやっているのに、きんぎょはマルを消しゴムで消してしまう。行為を否定されたことにより親切心を否定されたと感じたのだろう、ひよこは絵本を放り投げ、二匹はケンカしてしまう。あるいは第十五話、怖い絵本を読む二匹のエピソード。きんぎょがお昼寝してしまったので一匹で絵本を読み進めるひよこだったが、クライマックスの「ひとりであけるとおばけが出てくるよ」という言葉についに怯えてしまう。「あける」という行為の対象は絵本の中で描かれる扉なのだが、ひよこはそれを絵本のページだと混同したのだろう。いずれも、自己と他者の間、または現実と空想の間に境界線をまだうまく引けない子供の行動原理を的確に描いている。

子供心の的確な描写と併せて、今巻ではひよこの成長も温かく描かれる。友達との「ひみつきち」によって、きんぎょにもナイショの秘密を持つ。苦いコーヒーを平然と飲むきんぎょを見て大人に憧れ、大人たちの行動を真似したお手伝いをする。高い木から下りられないきんぎょたちを助けたくて、言葉ではそれを上手く説明できなくても、必死の行動によって目的を果たす。いずれも、子供という存在に対する想像力(あるいは観察力かもしれない)なくしては描き得ない、素朴かつ具体的な成長描写である。

そう、今巻の魅力はまさに、子供に対する想像力に支えられている。そしてこれは前巻の魅力――きんぎょとひよこという風変わりな親子や、ひよこのおっさんという形容矛盾的なキャラについての、存在の〈異端〉さゆえのドラマツルギー――に通じるところがある。それはすなわち、描かれるキャラに対する想像力である。現在の特質(=characterの原義!)から過去や未来を想い浮かべ、または入力に対する出力を想い浮かべる力である。ここにおいて、今巻と前巻は接続される。創作の根本のひとつとでも言うべき想像力に、この作品の魅力の根源があるのだ。

子供に対する想像力に支えられた、きんぎょとひよこの風変わりな親子の温かい物語。二匹のエピソードをもっと読みたくなったら、公式Twitterにて公開されている4コマを読んだり、前巻を手に取って欲しい。

謝辞

献本を頂きましたイースト・プレスの小林様に深く感謝申し上げます。連載が終わってもなお続刊が刊行されたことを、読者としてとても嬉しく想います。

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#102: COMITIA104発行『4コママンガのススメ 2012年版』に寄稿しました

  • よつぎりポテト
  • 2013年04月15日
  • 00時15分
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