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個々の食材の擬人化とその組み合わせが絶妙な食卓コメディ――池尻エリクソン『田中さんちの白米ちゃん(1)』

池尻エリクソン『田中さんちの白米ちゃん(1)』

「わたすは秋田の白米です 今日もおいしくたけますた」――。料理好きのサラリーマン・田中さんに買われたあきたこまちの白米ちゃんと、その友達のみそ汁ちゃんを中心とした食卓擬人化4コマ。竹書房『まんがくらぶ』『まんがライフ』連載。

本作の擬人化は上手い。実に上手い。これは何度言っても言いすぎることはない。まず、元の食材が一目で分かるシンプルな外見で対象の食材を描き、その言動には食材の特性を見事に反映させている点が上手い。白米ちゃんを例に挙げてみよう。外見は蓑を被りもんぺを着た田舎娘。東北の農家をイメージさせる姿である。彼女が炊飯釜の中で研がれる姿は滝修行のごとし。外出するときは田中さんの頬にくっついて。チャーハンとして炊かれればパラパラを踊り、固めに炊かれれば眼鏡をかけた真面目な姿になる。さらに、田中さんラブのみそ汁ちゃんも見てみよう。外見は緑の帯(=ネギ色)に茶色(=味噌色)の着物少女。田中さんへの愛の言葉は湯気で伝える。結婚指輪は輪切りの万能ネギ。バレンタインの贈り物はハート型に固めた味噌だが、「溶きが甘かった」と田中さんに溶かされてしまう。それぞれ、白米と味噌汁の特性が現れている擬人化と言えよう。

登場する食材は、白米ちゃんとみそ汁ちゃんに限らず、バラエティーに富んでいる。雅なる米・魚沼産コシヒカリ。白米ちゃんの姉にして酒飲み・おミキ(=神酒)さん。豆顔(形状的な意味)でネットリ無表情の納豆さん。中身のない男・ピーマンさん。温室育ちの赤髪トマト姉妹(妹はプチトマト)。開放的というか露出癖のあるアジさん。ギターのスター・リンゴさん。ちぢれロングヘアーの中華娘・ラーメンさん。頭のみかんが実はタンコブ(餅つき的な意味)なお餅さん。白髪アフロのわたあめさん――。日常性と季節性を重視する4コマ誌において、日常的な食卓から季節のイベントまで幅広くカバーしていることが分かる。これだけ多くの擬人化キャラを生み出す作者の発想力には平伏せざるを得ない。また、いずれの食材の描写も(ネバネバ系食材という例外はあるが)食べられるという立場にありながらグロテスクな描写はほとんど一切なく、ギャグ漫画としてのコミカルさを大切にしていることが伺える。

そして――ここからが本題だが――本作の擬人化の上手さは、これら個々の食材の描写のみにとどまらず、その組み合わせによるコメディにまで及んでいる。単行本1巻であれば夏祭りの話が最たるものだろう。油揚げの浴衣を身にまとい、田中さんの頬にくっついて夏祭りにやってきた白米ちゃん。ふとしたことから田中さんとはぐれてしまった白米ちゃんは、夏祭りの食べ物たちに助けられて田中さんを探す。ソースせんべいさんは似顔絵を書く。わたあめさんは夏祭り参加者の手にしたわたあめの人脈(?)を使って田中さんの居所を突き止める。そしてかき氷さんは台パチンコを使って白米ちゃんを田中さんの頬に飛ばすアイデアを思いつき、自ら氷のジャンプ台になる。発射間際にかき氷さんは白米ちゃんに言う。「氷はいつか溶けるもんさ/…でもな/友達をアイスる気持ちは溶けやしない――」。言葉遊びも加えたこのコメディには、個々の食材の擬人化の上手さ、そしてその組み合わせの上手さがよくあらわれている。

単行本1巻には収録されていないが、私が最も好きな一話が海賊(かいぞく)の烏賊(イカ)の一話だ(『まんがくらぶ』2011年5月号収録)。この話では、まず漢字、次いで「海賊王」と「大王イカ」による言葉遊びで始まり、そこに光に集まるというイカの習性により光り物が好きな海賊という〈理〉を与え、さらにあぶり出しの宝の地図からあぶられて丸まるスルメの習性を接続している。言葉遊びという一見して安直な発想から始まっているように見えるこの一話は、しかし話が進むにつれて食材の要素が「安直な発想」を確固たる理由づけでもって後ろ支えしていく。そして、最後の一本が終わったときにはコメディとして成立してしまっているのだ。そのコメディの過程は「ここでその要素を持ってくるか!」という驚きの連続である。

作者は擬人化の世界を大切にしている。それは、これまで述べてきたような明らかな擬人化はもちろんのこと、それを影ながら支える技法にも現れている。少し注意して読むと分かるが、本作に登場する人間キャラは目が描かれていない別記事でも似たようなことを書いたが、人間の目の排除はふたつの世界の切り分けを可能にする。すなわち、擬人化された食材たちが描かれるコマに人間の目を描かないことによって、人間の世界と食材の世界を明確に分けることができる。作品で描かれる白米ちゃんの姿は田中さんには見えていないのだ。これが、ファンタジーが許容されにくいファミリー4コマ誌において、しかし本質的にファンタジー要素を含む擬人化を、いわば「食材の国のおとぎ話」として成立させている要因と言えよう。

本作は擬人化とファミリー4コマ誌を論じる上でも重要な作品と言える。多彩な擬人化キャラたちによる日常性と季節性のカバーと、人間の目の排除という擬人化技法による「食材の国のおとぎ話」としての成立――。ファミリー4コマ誌における擬人化的想像力は「動物のおしゃべり」や「東京!」などの作品に既に見られる。しかし、こと「ファミリー4コマ誌との親和性」という観点においては、本作は既存作品に引けを取らないか、あるいはそれ以上の作品であると言っても言い過ぎではないだろう。このような作品が、そもそもファミリー4コマ誌からではなく、ウェブコミック「livedoor デイリー4コマ」から登場したことは実に興味深い。この新たな感性に、今後も注目していくべきだろう。

個々の食材の擬人化とその組み合わせが絶妙な食卓コメディ。擬人化好きのみならず、広く万人に読んで欲しい作品である。

おとなり感想

万人に通じる、そんなマスコット的な可愛さがあって、子供が見ても喜びそう。内容もシンプルだし、するするとスムーズに読めて、そんなところに気の利いたネタが投入されるものだから、くすりと笑ってしまうんですね。しかし、納豆の威力がすごい。あの絵柄の強烈さでもって、どんな状態からでもオチに持ち込める、そんなキャラクター。白米、みそ汁はじめ、他のキャラクターは可愛かったりするのに、納豆だけなぜこんなに!? と思うくらいの扱いで、でも納豆の特徴というかはよく表現されてるようにも思うのですね。

こととねお試しBlog: 田中さんちの白米ちゃん

田中さんに美味しくいただかれるのが大好きな、素朴で可愛いごはんちゃんとみそ汁ちゃんが、嬉しくって大はしゃぎしたり、田中さんのためにしでかしたりしたことが意思疎通の出来ない田中さんをびっくりさせたり不幸を呼び寄せたりしてしまうことになったり、逆に田中さんは大好きだけどごはんちゃんは大のニガテとする納豆(ナゼか全身ぬるぬるの無表情な男達の集団で描かれる(;´▽`A``)を載せられて「えええーーっ!?Σ(T□T)」ってなったりする、食べ物たちと田中さんの間のディスコミュニケーションからくる空回りだったりすれ違いだったり、人間の視点と田中さんを見上げるごはんちゃんたちの世界とのギャップが面白いんです。

田中さんちの白米ちゃん:Comic Twitter !

この4コマでは時々食材目線からのメッセージが織り込まれています。「これだけのために出費した甲斐があった」と思えるぐらいオレのお気に入りの一文があります。「あなたの「おいしい」が聞きたくて、わたすたちはがんばっています。煮たり焼いたり蒸されたりご飯になるのも大変だども、明日もおいしくしてください。わたすたすが「ごちそうさま」を聞かないように」

つらつら雑記帳 【コミックス感想話】ごちそうさまといえる幸せ【田中さんちの白米ちゃん編】

「お米の1粒1粒に感謝しながら残さず食べなさい」その1粒1粒に神様がいる・・・といったようなことを聞かされて、子供時代を過ごされた方もおられるやもしれません。そこには汎神論的な考え方とでもいうのでしょうか、日本的な情緒を感じてしまうのですが、こうした情感を具現化したものこそが、この白米ちゃんたち擬人化された食材たち・・・なのかもしれません。(ゆえに人には視えない)

五里霧中: ◆ 『田中さんちの白米ちゃん』1巻 これは4コマ漫画における”食材”の宝石箱やー!!

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