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『まんがタイムラブリー』休刊に寄せて――近年の歴史とリニューアルを振り返る

6月13日発売の2011年7月号をもって、芳文社『まんがタイムラブリー』が休刊した。2011年2月のリニューアルからわずか5号、創刊から数えれば17年間の歴史に幕となった。ラブリーをリニューアル前から購読し、リニューアル後も楽しみにしてきた私としては、この休刊は実に残念である。

ラブリー休刊に寄せて、ラブリーの近年の歴史とリニューアルを振り返りたいと思う。概要をあらかじめ述べておこう。近年のラブリーは、2008年末からのストーリー作品志向、2009年末からの4コマ作品への揺り戻し、そして2011年のリニューアルと、方針転換の連続であった。すなわち、リニューアルは突然のものではなかった。私は、リニューアルは二度の大きな方針転換によって読者離れが起きていたラブリーの最後にとっての最後の賭けだったのではないかと考える。そして、リニューアルの失敗は、想定読者に対するアプローチ不足とコンセプトの不訴求にあったのではないかと想像する。

――

ラブリーは2008年末からストーリー作品志向を強くしていく。元々、ラブリーは他の4コマ誌よりもストーリー作品が多かった。2008年のラブリーでは、山本ルンルン、くぼた尚子、ねむようこ、しおやてるこ、ナントカらがストーリー作品を連載していた。また、現在4コマ誌を中心に活躍する板倉梓のデビューも、2008年8月号でのストーリー作品だった。そんな中、遅くとも2008年12月号の巻末には「ストーリー漫画作品大募集!!!」「プロの漫画家として即デビュー&掲載の可能性もアリ」と、編集部の力の入り具合が伺える告知が掲載される。また、2009年3月号の表紙には「オール読み切り!」と、実話誌やティーンズラブ誌でお決まりの煽りが踊り、編集部が女性読者をターゲットにしたストーリー志向を意識していたことが伺える。そして最盛期の2009年6月号では、ストーリー作品が作品数にして8分の23、ページ数にして104分の200を占めていた。

しかし、2009年末から、ラブリーは4コマへの揺り戻しを見せ始める。2010年1月号では新人作家4名による4コマ作品4作品が一挙に新連載となる。以降、これらの作家を含めて、板倉梓、伊藤彩、浅谷歩、古下えみ、七瀬充、十野七、三好ハツミ、舞奈、めぐみこづえ、名苗秋緒、宮賀暦、森菜すずは、大川マキナ、かまだいつき、NAL=ASK、日路、くりきまる、かがみいち、池尻エリクソンといった新人・準新人作家が連載・掲載される。また、この号から少なくとも2010年9月号まで、大乃元初奈、辻灯子、藤凪かおるなど、芳文社の4コマ誌で実績のある作者らの特集が号ごとに作者を変えて組まれる。それと並行して、ストーリー志向は薄れていく。2010年2月号にて連載再開した江草天仁×いべリコ「ハルの見えない望遠鏡」は、連載中断前のようにストーリー形式ではなく、4コマ形式だった。2010年6月号ではねむようこ「ペンとチョコレート」が連載終了した。この号以降、リニューアル直前の2011年1・2月合併号まで、連載作品としてのストーリー作品は登場しない。せいぜい、「ハルの見えない望遠鏡」のラスト三話がストーリー形式だったくらいだ。

そして2011年2月、ラブリーは大々的なリニューアルを行う。「本格ストーリー4コマ誌」を銘打ち、雑誌ロゴも新しくした。これまでの連載作家を文字通り一掃し、スクエニ・一迅社系の作家を中心に集めた。ボーイズラブ要素、ファンタジー要素、大人の恋愛要素を備えた作品を揃え、また1作品あたりのページ数を8~10ページと通常の4コマ誌よりも若干多めに取り、女性向けのストーリー性を色濃く出してきた。「ストーリー4コマ」自体はラブリーのリニューアルを待たずとも既に存在していたが、雑誌として前面に押し出したのはリニューアル後のラブリーが初めてだろう。その意味で、ラブリーのリニューアルは画期的であったと言えるだろう。控えめに言っても、思い切ったものであったことに疑いはない。しかし、その試みは結局わずか5号で幕引きとなり、雑誌自体も休刊となってしまった。

このようなラブリーの近年の歴史を振り返ってみれば、2011年2月のリニューアルが突然起きたものでないことは明らかだろう。2008年末~2009年末のストーリー志向と2009年末~2010年末の4コマへの揺り戻しという二度の大きな方針転換を経て、2011年2月のリニューアルがあったのだ。そして私はこう考える。ラブリーは度重なる方針転換によって少しずつ読者離れが起きていた、と。そしてリニューアルはラブリーにとって最後の賭けだったのではないか、と。むろん、これは私の想像に過ぎない。しかし少なくとも、方針転換に至るまでの期間が短すぎるということは言えるだろう。告知や誌面にあれだけ力を入れていたストーリー作品志向は1年しか続かなかった。4コマへの揺り戻しも、1誌連載の4コマ作品は単行本がおよそ1年半に1冊しか出ないことを考えると、1年という期間は単行本を待たない方針転換ということになり、利潤の重きを単行本に置く芳文社としてはこの期間は短いと言える。そして、こうした短い期間で雑誌の方針転換が何度も起きる時には、往々にして読者離れが起きているものだ(漫画雑誌ではないが、そのような例に『ゲーム批評』が挙げられよう)。ただ、リニューアル後に1年どころかわずか5号で休刊というのは、さすがに期間が短すぎると言えなくもない。しかし、これには東日本大震災による紙とインク不足の影響も少なからずあったのかもしれない(連載作家の堤妙子が震災の影響の旨をブログに記している)。

ラブリーのリニューアルは、成功か失敗かと問われたら、失敗だと言わざるを得ない。私はリニューアル失敗の理由はふたつあると想像する。ひとつ、想定読者へのアプローチが不十分だったのではないか。連載陣からするに、リニューアル後のラブリーは、例えば『Gファンタジー』や『ZERO-SUM』といった雑誌を好む女性を想定読者としていたことが伺える。しかし、リニューアル前のラブリーにこうした色はほとんど全く見られず(せいぜいHEROと内村かなめがゲストとして数回登場していた程度である)、ノウハウはほとんどなかったと考えられる。すなわち、新しい想定読者は言わば「未知の読者」だったと言えるだろう。そんな読者に対して、編集部がリニューアルしたラブリーの存在を届けられていたかどうかは疑問である。もうひとつ、よしんば届けられていたとしても、「本格ストーリー4コマ誌」という煽りが想定読者に訴求しなかったのではないか。想定読者――おそらく普段は4コマを読まないだろう――が本当に知りたかったのは、ラブリーが推す「ストーリー4コマ」作品からどんな快楽が得られるのか――ドキドキなのか胸キュンなのかキャラ萌えなのか――ということだったのではないか。この煽りが響くのは、むしろ以前から4コマ漫画を読んでいた層だろう。ファミリー4コマ誌で萌え系4コマ誌でもない「ストーリー4コマ」誌からどんな作品が飛び出すのか、気になった読者は相当数いると思っている。少なくとも私がそうだし、新しいラブリーに期待もしていた。しかし、こうした旧来の読者の多くが大々的なリニューアルによりラブリーから離れてしまったことは、想像に難くない。

【追記(6月19日 17時45分)】――と、前の段落および概要では書いたのですが、色々な話を総合すると的外れだったようなので削除しました。想定読者へのアプローチはうまくいっていなかったというわけではないようですね。ただ、編集部の現場では、私の想像をはるかに越える苦労があったようです。ふたつ前の段落で書いた「震災の影響」も、現場にとって最悪の形で現れてしまったようです。その意味で、ラブリーはリニューアルの成否が判断できる前に休刊となってしまった、と言うのが適切だろうと思いました。現場の編集者にはただただ、お疲れさまでした、ありがとうございました、そして前の段落のようなことを書いてごめんなさい、という他ありません。【追記ここまで】

――

以上、駆け足ではあるが、近年のラブリーの歴史とリニューアルを振り返った。冒頭の繰り返しになるが、ラブリーをリニューアル前から購読し、リニューアル後も楽しみにしてきた私としては、この休刊は実に残念である。せめてこの休刊が多くの人の記憶にとどまることを願って、このように記録をとどめてみた次第である。

加えて、一読者として、いくつかの作品についての思い出も記しておこう。HERO「はじめのちひろ」は、作者らしからぬ比較的軽いノリと、作者らしい〈結〉の位置をずらす手法が印象的な作品だった。四ツ原フリコ「恋とはどんなものかしら」は、ひどく重い恋の話を、4コマから4コマへの連続性を大切にし、ストーリー性強く主張する作品だった。菊屋きく子「ココロナヤミに小鶴堂」は、小鶴堂を訪れる客の過去に確かなストーリー性がありつつも、小鶴堂メンバーは淡々と仕事をこなすという、非〈日常〉と〈日常〉が合わさった面白い作品だった。玉置勉強「うみそらノート」は、〈緊張〉(対義語は〈弛緩〉)の連続と自由度の高いコマ割りにより、友愛の瞬間を強く印象づける、興味深い作品だった。ハラヤヒロ「帰宅部活動中!」は、帰宅部という最も「青春」から遠い位置にありながら、登場人物たちの「今」を大事にする姿は実に青春的であり、作者4コマ作品の「括弧書きの『青春』とは無縁な私たちの青春」という点が好きだということを私に認識させてくれた作品だった。他にもいくつか好きな作品はあるが、「ストーリー4コマ誌」のストーリー4コマ作品として、私は以上の作品を特筆しておきたい。

最後になるが、連載作品が救済されることを願ってやまない。今であれば、2日の筋の雑誌=ホーム・ジャンボ・タイスペ辺りが、雑誌の色的には比較的受け入れやすいのではなかろうか。しかし、現時点で移籍が明言されているのは内村かなめ「ひとりじめ弟イズム」のみであり、しかも芳文社他誌ではなく他社への移籍である。より多くの作品について良い知らせが聞こえてくることを祈りながら、この記事の締めとしたい。

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