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芳文社『まんがタイムきららミラク』vol.1

3月16日創刊の新しいきららグループ4コマ誌(公式サイト執筆陣一覧)。きらら本誌の増刊扱い。キャッチコピーは「もっと、自由に4コマを。」。これまでの4コマ誌ではほとんど全く名前が出てこなかった総勢18名の執筆陣による作品を収録。

総評は「想像以上のモノが出てきた」の一言。「ほぼ全員が漫画初挑戦!!」という事前情報の不安を吹き飛ばす、新しくも充実した内容。作品のビジュアル性の高さから、執筆陣の多くはイラストレーターと考えられるが、同じくイラストレーターを多く採用したきららMAX創刊号とは比べものにならない。ここから、ミラクには9年近くに渡ってきららグループ誌を刊行してきた編集部のノウハウが存分に投入されている、と言っても言い過ぎではないだろう。

ただ、キャッチコピーが言う「自由」とは何なのか、と聞かれると、まだはっきりとしたことは言えないように思う。自由を掲げるからには何らかの不自由、すなわち4コマ漫画における制約を想定しているはずである。しかし、1ページあたり4コマ×2というフォーマットはどの作品も崩していない。4コマ一本の枠を越える「ストーリー4コマ」は、そもそもきらら系を待たずとも既にあった。ネタではなくキャラに重きを置くことは、ミラクを待たずとも、これまでのきららグループ誌がやってきたことだ。これらはミラクが言う「自由」たり得ない。

それでも「自由」への手がかりはいくつかある。ひとつはキャラ絵の頭身と描き込み。ミラク作品の多くでは、キャラ絵の頭身は高く、そして相当な描き込みがされている。一般的に、4コマ漫画ではキャラ絵の頭身が低く、描き込みも単純になる傾向がある(それは湖西晶「かみさまのいうとおり!」や丸美甘「生徒会のヲタのしみ。」がよく示している)。もうひとつは一作品辺りのページ数。通常の4コマ誌における一作品辺りのページ数は4~8ページ、新装刊ラブリーでさえ8~10ページである。それが、ミラクでは一作品あたりのページ数が10~14ページと有意に多くなっている。これら二点を合わせれば、ミラクではヒロインの身体性をより濃密に描こうとしている、くらいのことは言えるかもしれない。ともかく、「自由」については議論の余地があるし、その議論は4コマの(括弧書きでの)「あり方」を考える上で有意義なものとなるはずだ。

以下ではいくつかの作品の感想を。

小波ちま「リリィ」
表紙&巻頭作品。きらら2月号の告知絵作品。「悪魔憑きの屋敷」の噂を聞いてやってきた姉妹。妹の久美は屋敷で不思議な本を手にしてしまい、夢うつつの世界でリリィという名の悪魔に魅入られてしまう。細い線による背景(特に巻頭カラー)やキャラの描き込みは特筆。一方で、デフォルメ絵も用いた緊張の緩和を4コマ目に的確に配置することで、4コマとしてのリズムも失っていない。なるほど、さすがに巻頭作品だけのことはある。久美とリリィに多分なエロスを感じるのは、二人の会話や「悪魔」という記号はもちろん、やはりビジュアルによるところが大きい。作品としてはこの辺を追求していくのだろうか。
タチ「桜Trick」
キャラット4月号の告知絵作品。高校に入学した、親友同士の春香と優。新しいクラスメイトの女子たちはそれぞれにノリがいい人ばかり。そんな彼女たちに優の隣を取られてしまった春香は嫉妬の感情を隠しきれなくて。この後で二人は二人きりの教室でラブラブチュッチュしちゃうわけだけど、桜の花びらを間に置いた春香と優のカットバックや、キスする二人のロングショットが実にドラマチックで、否応なく二人に引き込まれる。このカメラワーク、4コマではなかなかできないよなあ。
眉毛「純粋欲求系リビどる」
MAX4月号の告知絵作品。クラスメイトのしずくに憧れる、普通の男子高校生・リヒト。そこに現れた美少女転校生三人のレン・リク・ルコ。彼女たちは「強すぎるリビドー」が凶暴な生物として具現化してしまうリヒトを守りに来たと言う。バトルシーンを含めた多くのシーンにおいて、転校生三人のほぼ全身の姿をコマ内に収めている。それが彼女たちの肉体性を際立たせ、まさにタイトルの通り、読者のリビドーを駆動させようとしていると言えよう。これも4コマではなかなかできないことだよなあ。
はりかも「夜森の国のソラニ」
MAX3月号の告知絵作品。「起きたくない人間が迷い込む夜の国」・「夜森」に迷い込んでしまった、記憶を無くした少女。彼女はそこで夜森の住人たちと出会い、「ソラニ」という名前を与えられ、彼女の記憶を取り戻す長い夜が始まる。ミラク作品の中で一作品だけ「これ好き!」を挙げるなら今作。少年少女たちが紡ぐ、コミカルでいて閉鎖的なファンタジーだなんて、私が好きにならないはずが無い。夜森の管理人・夜森(ああ、ややこしい)の、ソラニを評した「知人と似てい」るという言葉からは、その知人との閉鎖的な関係が想起されるし、ソラニとの今後の関わり合いも想像される。そして作品の舞台である夜は本質的に閉鎖的であり、さらに先行きの見えなさ・不安さをかき立てられる。おそらく、ガンガン的感性にはビシビシくるんじゃなかろうか。とても楽しみ。
柊ゆたか「Good night! Angel」
フォワード3月号の告知絵作品。昼は普通(?)の高校生、夜は街の悪と戦う暗殺者のユリ。彼女のクラスに現れた転校生のあやめは、ユリのことを知っているような素振りを見せる。暗殺者パートでは高い頭身と細い線で緊張感高く、高校生パートは低い頭身と太い線でゆるく、ユリの姿を描く。そのギャップが「同じ作者か!?」と思える程で面白い。今回は少なめだった暗殺者パートは次号以降に期待。
奄美あまゆ「Lisa Step!」
ネイティブの女英語教師・リサ先生の赴任一日目。彼女を含めた五人の女教師が美術準備室(?)に集い、濃密な女教師空間を描く第一回。蕃納葱作品が好きな人にはピンとくるんじゃなかろうか。しかし「教艦ASTRO」でもここまで細い線での描き込みはなかったようには思う。リサ先生の「変な日本語を覚えちゃった」キャラが、その前向きキャラと相まってチャーミング。周囲の女教師の面々も個性的。それぞれのキャラをじっくり描いていって欲しいなあ。
パイン「きしとおひめさま」
12年前に地球を貫くように開いた大穴を監視し続ける研究員たち。ある日、研究員が調査をする最中、大穴に異変が起こる。亡き父の跡を継いだつくよ、彼女の同僚で結婚を予定している二人、彼女を先生と尊敬し追ってきた少年、そして老いた所長と、それぞれのキャラに生が感じられて読ませてくれる。そして彼ら・彼女らの間で繰り広げられる言語的コミュニケーションの模様が、4コマとしては複雑かつ濃密で、その現実味にキャラの生が加速する。一話目から見せてくれるなあ。ところで、扉の柱コメントと締めの床コメントは、〈日常〉性を議論する上で示唆に富むコメントであることよ。
CUTEG「スイート マジック シンドローム」
転校生活が終わり、高校では友達をたくさん作ると意気込む甘子。お菓子好きでもある彼女は、お茶とお菓子と友達を求めて茶道部に入ろうとするも、茶道部は既に廃部。諦めきれずに茶道部室で開けたプリンからは、お菓子王国の王女であるプリンさんが飛び出してきて。プリンさんの姿を金髪+(おそらく茶色の)ベレー帽=お菓子のプリンの写像として描く作者には全幅の信頼を置いていいと思った。キャラ頭身が高めのミラクの中で、おそらく唯一ロリ分が補給できる作品。二人の素直でお菓子好きな姿、そしてそのいでたちに、幼女性を感じずにはいられない。絵も俺好みでおいしいです。
パインパ「るーてぃんルーティン」
チャットにハマるフリーターの彩さん。彼女はチャット友達のリンちゃんの男嫌いを直すべく、男性のチャット友達も巻き込んでオフ会を企画する。喜怒哀楽の表情がコミカルという意味で4コマらしい4コマな作品。顔が見えない画面の向こうのリンちゃんを脳内で勝手に妄想する彩さんの可笑しさよ。しかしこの彩さんの言動はもちろん危うさを含んでいるのであって、おそらく次号で描かれるオフ会がどうなることやら気になる。
白滝キノコ「びぎなーず9」
巻末作品。高校生になった野球少女のたまとかなは、野球部の無いこの高校で野球部を作るべく、野球経験者で保健医の篠崎先生を訪ねる。そこでたまは篠崎先生から野球をやる理由を問われ、そして野球の実力を試される。野球シーンの描写に存分な動きがあって面白い。そしてたまの諦めの悪さと篠崎先生の指導者らしさがいいキャラしてる。一方の絵柄は頭身が低くどちらかと言えば古風で、最もミラクらしくない作品のように見える。しかし、雑誌のクローザーとしてはこれくらい意外性がある方が機能するのかもしれない。

次号は5月に発売予定。こちらも『4コマnanoエース』と同じく隔月刊の模様。

(※この記事はクロスレビュー企画に参加しております。)

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