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芳文社『まんがタイムラブリー』2011年3月号

リニューアル号。執筆陣と掲載作品とロゴを一新し、ボーイズラブ要素、ファンタジー要素、大人の恋愛要素などを備えた合計23作品が掲載。そのほとんどが、「ストーリー4コマコミック誌誕生」という表紙の煽りの通り、ストーリー性の強い4コマ作品。ストーリー性の強さは、各作品の4コマ一本における4コマ目の「結」の弱さや、一作品あたり概して8~10ページ(通常のファミリー誌だと6~8ページ)という多めのページ数から伺える。こうした雑誌の色は、旧ラブリーと比較してももちろん、今までのどんな4コマ誌とも似ていないと言っても言い過ぎではないだろう。

掲載作品は、4コマとしての成立の是非はさておくとして、確かにストーリーとして読ませる作品が揃っている印象。多くの作品の第一話が、登場人物の過去や未来、あるいはその関係性の変化や進展をほのめかしている。別の言葉を使えば、最初からキャラクターを描くことを志向している作品が揃っているとも言える。

一読者としては、普段の4コマ誌ではあまりお目にかかれない執筆陣が揃っていること、そして読み応えのあった作品が多かったことから、新しさと期待を感じた。これは、個々の執筆陣はもちろん、それらをひとつにパッケージングした編集の力があってのことだと思う。自分が好きな作者がちゃんと数人いるというのも大きい。購読するモチベーションは高い。

一読者ではなく読者として思うのは、これだけ旧ラブリーを破壊して新しいことに挑戦しているのだから、届くべき読者に届いて欲しいなあと。具体的には、スクエニ作品や一迅社作品を好む女性とは親和性が高そうに思える。事実、表紙にHEROを据えていることからも、そういった読者を狙っているのではなかろうか。古くからのファミリー4コマ誌を好む読者に本誌が受け入れられるかと聞かれたら、さすがに懐疑的にならざるを得ない。

以下、個々の作品の感想をよりぬきで。

HERO「はじめのちひろ」
表紙・巻頭作品。表紙には「WebStar登場!!!」なんて煽りもあったり。作品は学生姉弟のはじめとちひろの日常。第一印象は「いつもの作者作品と違う!」。普段は色濃く出ているコミュニケーションという主題はどこへやら、いわゆる「ゆるい」日常作品に仕上がっている。そんなわけで私の中では「こういう作品も描けるのか」という思いと「せっかくのストーリー4コマ誌なのにもったいない」という思いがバトルしているのだけど、雑誌の巻頭作品ということを考えると、これくらいの軽さの方が雑誌に入りやすいのかもとも思う。
内村かなめ「ひとりじめ弟イズム」
義母が連れていった兄・さくらの転校で、彼と久しぶりに再会した弟・カンナ。さくらがショタ顔だったりにカンナにベッタリだったり、カンナもさくらにドキっとしたり独占欲出しちゃったりと、ボーイズラブチックな作品。さくらのピュアな笑顔に抗えない自分がいる……。さくらの妹・楓も含めた三角関係にも期待。
四ツ原フリコ「恋とはどんなものかしら」
婚約を破棄された過去を抱える、化学教師の鈴木撫子。準備室で彼女の寝顔を見た、「ホスト」があだ名の男子生徒・山田は、彼女に「先生のこと好きになっちゃったみたい」と告げる。しかし、鈴木は「恋なんて生まれてこの方したことがない」と思うのだった――。恋愛を描いた4コマ作品は旧ラブリーからあったが、ここまで重々しく描いたものは珍しかったように思う。そして、新ラブリーのストーリー性の強さを象徴するかのような作品でもある。それは、主題はもちろんのこと、4コマの描き方にもあらわれている。p.58右3コマ目から左3コマ目は特にそう。このコマ列がひとコマずれて4コマ目~4コマ目になっていたら、右の4コマから左の4コマへの連続性が薄れてしまう(代わりに4コマとしての締まりは良くなる)。作者が意図的に行ったか否かはさておき、結果としてこうなっていることは特筆していいだろう。
桑原草太「ココロ君色 サクラ色」
タイスペからの移籍作品。今回は番外編的に、小春の父(漫画家)のアシスタント・山口くんの卒業式。第二ボタンを想い人に渡せなかった過去を「良い話風にまとめて」他者に語りながらもまだ「苦い思い出」と意識している彼に、辛い過去を客観視することによりそれを自分から切断しようとするもしきれない、そんな葛藤を見出してしまって私の心も動かされてしまうのでありました。単行本1巻が4月22日に発売。
菊屋きく子「ココロナヤミに小鶴堂」
漢方薬局店「小鶴堂」の求人募集に応募した柿岡もろこ。その植物毒への耐性を買われて合格したものの、薬局の「夜の」主人・雛ノ助は妙に若いし、毒草や毒薬を扱うという仕事内容も怪しくて――。第一話からキャラが立っている作品。食い意地ゆえに毒耐性がある、というもろこのキャラがコミカルで、それが薬局の非日常的や環境や面々の中で異質な存在感があって(interestingという意味で)面白い。ストーリーは、タイトルからするに、心の悩みと薬が関わってくるのかなあと思うけど、はてさて、その辺りは次号を待つことにしよう。
都波みなと「カフェは今日もにくきゅう日和」
猫カフェ、というか肉球カフェを切り盛りする兄弟と、二人を見守る幽体の姉(ただし猫の姿)の日常。この雑誌で最もファミリー誌的な作品。とはいえ、猫ラブ・肉球ラブ要素ではなく、三人の過去にストーリー的な重きが置かれている点が、ファミリー誌の色とは異なるか。しかし他作品と比較して太・丸な線も相まってか、息抜き作品として実にいいポジションにいると言えよう。掲載位置もほぼ真ん中だし。
ハラヤヒロ「帰宅部活動中!」
陸上部への夢を断たれ、「退屈な高校生活が始まる」と自嘲する少女・渡辺。いわゆる帰宅部を選んだ彼女だったが、「帰宅部」なる部活を本当に作ってしまった帰宅部部長・佐藤に巻き込まれてしまって――。言葉遊びと日常系が融合してしまったようなシンボリックな作品のように見えて、背景の情報量の少なさ・もの寂しさと相まって、どこか非日常的なノスタルジーをかき立てられ、佐藤の「青春」という言葉に妙に共感してしまう。

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