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秋吉由美子氏に関連した4コマ単行本の議論について

先日発売した『まんがくらぶオリジナル』の次号予告に秋吉由美子氏の名前があったことがきっかけで、現在4コマ漫画の単行本についての面白い議論が行われています。このエントリはその議論について書いたものですが、ちょっと長くなってしまいました。ご了承ください。

さて、秋吉氏は、主に芳文社の雑誌で活躍されている4コマ漫画家です。現在、芳文社の雑誌では、『まんがタイムファミリー』で「はるなちゃん参上!」、『まんがタイムスペシャル』で「まつのべっ!」など、合計4作品を連載されています。しかし同氏の単行本は、2002年5月の「うちの母親待ったなし」3巻を最後に、その後1冊も発売されていません。秋吉氏の詳細については秋吉由美子 - Wikipediaを参照して下さい。

まずは議論を順に追っていきたいと思います。発端はBlueViridianさんのこの発言。

芳文社はその作家が一度単行本で滑ると、二度と出してくれない傾向がありますが、他社で評判になったとしたら黙ってはいないはずです。

(ホークブルービリジアン適当雑記 - 秋吉由美子ファン大興奮(例)より)

それに対してdominoさんがこう言及。

ここで思うのは、単行本が出なくなったのは滑ったかどうかというよりも、時期的にも『きらら』の影響を受けたような気がしてなりません。

(dominoの編集後記 - これは契機なのかもしれないより)

するとそれに対してみでぃさんが日記でこう反論。

いや、昔活躍した4コマ作家の単行本が出ないのをきらら系の影響というのはいささか早計でしょう。雑誌数そのものが増えたこともあって、きらら系以外の単行本の発売数自体は、昔に比べむしろ増えてるくらいだと思います。ただ、その単行本発売の枠に昔活躍した作家が入れていないだけです。

(みでぃの日記 - 4コマ単行本の話より)

さらにdominoさん。

単行本が出なくなった方々というのは巻数を経るごとに売れなくなったというより、単行本を出すのにあたって版元が期待するレベルが上昇したのではないのかな、と想像するわけで。そこまでの実績がそのレベルを超えていたら現在でも単行本が出てるし、下回ってたらそこで切られたのかなとか。で、期待するレベルが上昇したのは『きらら』の単行本が出てからではないのかなぁと。ただ、現状の『きらら』だと期待するレベルというのはこれから下がっていくのでは、それだったら何らかの形でかつて単行本が出てた方々の復活の余地はないのかな、『まつのべっ』くらいは単行本にしてくれても、と期待してしまうんですね。

(dominoの編集後記 - 4コマ単行本の話(みでぃの日記より)より)

さらにさらにみでぃさん。

直接きららというより、4コマ漫画誌に載ってる作家が全体的にその時期(実際にはその数年前)から一気に世代交代しちゃってるんですよね。なので、きらら自体がレベル下がったとしてもきららの分の単行本枠が減るだけだと思います。そうなったとして、きらら以外の分の枠が増えるとも思えないですし。

(みでぃの日記 - 4コマ単行本の話続きより)

現在のところ、議論はここまでのようです。

この議論を受けて私が考えたことを書いてみます。

まず、みでぃさんの「きらら系以外の単行本の発売数自体は、昔に比べむしろ増えてるくらいだと思います」という言葉を確認するため、過去7年間で芳文社から発売された単行本のうち、まんがタイムコミックスとまんがタイムきららコミックスのそれぞれの冊数を調べてみました。結果は各年前半(1月~6月)と後半(7月~12月)に分けてまとめ、グラフにしました。

芳文社から発売された単行本数

ここから、まんがタイムきららコミックスだけでなく、まんがタイムコミックスも年々発売数を増やしていることが分かります。となると、きららの影響で非きららの単行本が出なくなったと考えるのは、ちょっと違うような気がします。

では、なぜ秋吉氏の単行本はなかなか出ないのか。みでぃさんはその理由が「収益モデルの変化」にあるのではないかと言っています。

その理由は何なのか。世代交代とか無難にまとまりそうだったのをもう少し考えて、なんとか『収益モデルの変化』というところまでは行き着きました。つまり、“定番作”から“新刊”への転換ですね。

昔は、どこをとっても同じ内容の定番作で長期的な売り上げを見込んでいたのでしょう。ところが、新刊ばかり扱う書店が台頭した結果、定番作をいつまでも置いてくれる書店が少なくなり売り上げ減。結果、新刊中心の売り上げが見込める“話に連続性がある作品”に比重が移っていったと。

(みでぃの日記 - 4コマ単行本の話より)

私も、この収益モデルの変化という考えに賛成です。そしてさらに付け加えるならば、それは定番作から新刊への変化である前に雑誌から単行本への変化だと思います。

最近の出版業界では「雑誌が売れない」ということが言われているようですが、4コマ誌もその例に漏れず売上が不調なようです。しかしその逆に単行本の売上は伸びているようです。これについては、『まんがタイムジャンボ』編集部デスクの高松昭夫氏が、同人誌即売会「コミティア」の情報誌『ティアズマガジン』のインタビューに対してこう答えています。

当社でも雑誌は最近不調で、単行本で利潤をあげないと厳しいのは確かです。4コマに限らず、今の読者さんは単行本になって好きな作家さんの本を買う志向が強いのではないでしょうか。おかげ様で4コマの単行本の売上の方はずっと右肩上がりで、5年前ぐらいからどんどん比重が高まってきました。

(『ティアズマガジン』VOL.74 pp.38-39 「編集王に訊く まんがタイムジャンボ編集部デスク 高松昭夫さん」より)

単行本で利潤を上げるなら、売れる可能性が高い単行本を出さなくてはなりません。では、それはどのような単行本なのでしょうか。ひとつにはみでぃさんの言うように「新刊中心の売り上げが見込める“話に連続性がある作品”」だと思います。そしてもうひとつ、私が思うのは、絵が華やかな作品です。

単行本が書店に並べられる際に、お客さんが本のどの部分を目にするかと言えば、当然表紙です。そして固定ファンはもとより、初めて単行本を見るお客さんにもその本を買ってもらうには、やはり表紙絵で目を惹かせて表紙買いさせるのがいいんじゃないかと思います。

4コマ漫画の絵については、先ほどのインタビューの中で高松氏がこう答えています。

流れが変わったのは、水城まさひと先生の「エン女医あきら先生」からでしょうか。『まんがタイムジャンボ』のかなり初期から続いている作品ですが、当初はこの絵柄は浮いていたんですね。『まんがタイム』創刊から30周年になりますが、4コマの絵は大きく変わってきてます。週刊少年誌で育ってきた現在20代30代の読者が増えるなかで、今のようなストーリーマンガとボーダレスな絵柄が受け容れられるように変わってきました。そこに『きらら』がひとつの起爆剤となって拡大しつつあるのが4コマの単行本の市場だと思います。

(『ティアズマガジン』VOL.74 pp.38-39 「編集王に訊く まんがタイムジャンボ編集部デスク 高松昭夫さん」より)

また、議論の中心人物であるdominoさんも、以前にこう言っています。

値段の話はさておき、数年前の芳文社の単行本は表紙というのか装丁というのかわからないけど、正直しょぼいことが多く、他ジャンルのコミックに比べて売りにくかった。(中略)

一方でドキドキビジュアル方面が出てきてからは、中身の問題はさておき見た目の問題として売りやすくなったと思う。ドキドキビジュアル方面でなくても一時よりは見た目が垢抜けてきたので、4コマ全体に売りやすくなってるとも思う。

(dominoの編集後記 - 「まんがタイムスペシャル」や秋吉由美子氏のことなど(「最後通牒・こぼれ話」より)より)

では、秋吉氏の絵は華やかなのかと聞かれたら、少なくとも私は、最近発売されたまんがタイムコミックスの作品と比べると弱いかなと思っています。そのため、秋吉氏の単行本はなかなか発売されないのではないでしょうか。

私の考えをまとめます。まんがタイムコミックスは年々発売数を増しており、きららコミックスの影響を受けているとは考えにくい。また、芳文社の収益モデルが雑誌から単行本へ、定番作から新刊へ移りつつある現在、売れる可能性が高い単行本としては、話に連続性がある作品、絵に華やかさがある作品が考えられる。秋吉氏の作品は他のまんがタイムコミックス作品に比べると、絵の華やかさという点で弱いのではないか。そしてこれが、秋吉氏の単行本がなかなか発売されない理由なのではないか。このように思います。

ただ、絵の華やかさと話の面白さは当然別次元ですし、絵が華やかじゃないからキャラに魅力が無いというわけでもないです。その点で秋吉氏は損をしているというか、不遇の4コマ漫画家であるような気がします。「4コマの絵は大きく変わってきてます」と、時代の流れとして片付けてしまうのは惜しいんじゃないかと思います。

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#8: 「WORKING!!」を買う&萌え四齣について

  • サイロgoo!
  • 2005年12月25日
  • 11時12分
久しぶりに人に勧められて4コマを購入。その流れで萌え四齣についてちょろっと。【記事修正しました】 ... 全文を読む

コメント

#35:

  • kow
  • (URL)
  • 2005年12月24日
  • 22時03分
  • 編集
なんかよく分かんないけど
芳文社が、おとぼけ課長増刊(B6サイズでない方)と
あさかぜくん増刊を出さなくなった頃が
出版方針の大きな転換期だったのかもしれません。
世代論も収益モデル論も含めて。
これは僕の妄想ですが(裏もとってないし)。

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