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佐野妙『Smileすいーつ(1)』/まんがタイムコミックス/芳文社

佐野妙『Smileすいーつ(1)』

今年の4コマ単行本第1巻で最もオススメしたい1冊。

芳文社『まんがタイム』『まんがタイムファミリー』連載。二人暮らしの姉妹,色っぽくてオヤジキャラなOLの姉・塔子と,キュートで世話焼きな女子高生の妹・果歩の日常。作者初単行本。

今作は実にファミリー4コマ的である。日常・キャラ・笑いの三点が揃っており,情報量も抑えられていて分かりやすくて読みやすい。

甘い姉妹模様がゆるやかに,そして徹底して描かれる。中でもスキンシップは特筆。手握り・抱きつき・添い寝・背中合わせ,そのいずれもがふんわりと柔らかく,そして微笑ましい。これは太く丸い線の力によるところが大きい。線が細い単行本前半に比べて,線が太い後半の方が,より柔らかい印象を受けるだろう。

ゆるやかな日常描写を支えるのはコミカルな手法。コマの情報量は抑えられており,キャラと日常風景が分かりやすく頭に入ってくる。一方で,見せ場ではネガポジ反転と点トーンを使い,ゆるやかに流れる日常を一瞬だけ止めてアクセントをつけている。

さて,ここからが本題。この作品は姉妹だけ見ている分には幸せだろう。しかしここに男性キャラが入ると,幸せな世界は遠くなる。控え目に言っても,作者は姉妹の世界が遠ざかるような読みへと読者を誘導している,と言うことはできる。

塔子の後輩・中津くんは塔子さんの近くでもんやりしてるのに,塔子さんは彼の気持ちに気づかない。中津くんが缶ジュースの間接キスにドキドキする一方で,塔子さんは「デリケートな事じゃな」いように他のOLにも缶ジュースを手渡す。雨の日に塔子さんと相愛傘で帰れると思ったら,塔子さんは彼女を迎えに来た果歩と相愛傘を始めてしまい,中津くんは一人傘。

果歩はぽっちゃりな彼氏・飯田くんとラブラブだが,飯田くんからは「男」がごっそり抜け落ちている。常にたれ目でにこやかな,そして甘いもの好きな飯田くんは,果歩にお腹をむにむにされて悶絶し,甘い香りを嗅がれて赤面する。この二人だけ見ていると,飯田くんの方が女の子のようだ。

上記ふたつの場合は「女々しい男たち」と言えば済む話かもしれない。読者が感情移入先をコントロールできれば「幸せな日常」を確保できる可能性が残されている。

しかし,中津くんが姉妹の家にカニ鍋をおよばれに来る話ではそうはいかない。この話では,作者が読者を中津くんに移入させようとしていることが,キャラ関係の描写のみならず視点の置き方からも強くうかがえる。

佐野妙『Smileすいーつ(1)』 p.109 2本目 1・2コマ目

果歩が中津くんを「あ 中津さん いらっしゃい」と迎えるコマに写っているのは果歩であり,この時点で読者に「私は中津さんだ」ということを意識させている。

佐野妙『Smileすいーつ(1)』p.110 2本目

その後に来る食事シーンはもっと露骨だ。食事を勧める果歩と塔子が単独で写る二コマの後に,中津くんが写る「ああ…いいなぁ」という三コマ目がやってくる。しかし四コマ目で,姉妹が視線を向けていたのは中津くんではないと知らされる! その一方で,姉妹視点から中津くんを見たコマは,この話には一切用意されていないのだ!

女性キャラの世界の外にいる,傍観者としての男性キャラ。実は,これは今作に限ったことではない。作者の別の連載作「森田さんは無口」でも,主人公の無口女子高生・森田さんの近くに男子は誰もいない。いるのは,森田さんとその周囲のかしましい女子たちを傍から眺め,「俺 生まれ変わるなら女子がいい」とつぶやく男子だけである。

こうしたキャラ描写を鑑みるに,同じく最近の姉妹もの作品であるが男性キャラの使いどころが異なる東屋めめ「L16」とは性質が異なる作品であると言える。むしろ東屋氏は「すいーとるーむ?」や「ご契約ください!」の方が,強い女性キャラ・弱い男性キャラという関係性を押し出しているという点で,今作に近い印象を持った。

「Smileすいーつ」,そして佐野氏は,男女キャラの描写と傍観者移入への誘導が面白い作品であり作者である。シンプルな日常描写の裏にあるその技は注目に値するだろう。来月には2冊目の単行本『森田さんは無口(1)』も発売される。佐野氏には今後も注目していきたい。

おまけ その1

作者サイトお仕事ページには単行本購入者へのお礼ページが用意されています。問題のヒントは単行本にあります。

おまけ その2

[2008年11月8日] 佐野妙『Smileすいーつ(1)』2冊

ペーパー特典がついてくるとらのあなゲーマーズで複数買いしてきました。

おとなり感想

男性キャラやキャラ関係に触れている感想を。

この漫画は自分をどの位置に置いて読むか、その位置取りを工夫することで、様々に楽しめると思うんですね。積極的にはまり込んで、誰かのポジションに収まってしまう、あるいは傍観者に徹するなど、距離感の違い、関係性の違いから生まれてくる感情の濃淡、グラデーションが面白みを増さしめます。

こととねお試しBlog: Smileすいーつ

塔子と中津君はそういった甘い関係には至っていませんが、そのうち発展したりしないかなーと期待。中津君は、基本的には頼りなく、人畜無害なキャラなんですが、やや勝気っぽい塔子には合ってると思うんですよね。

Smileすいーつ(1)/佐野妙 - 漫画メモとか。

確かにオビのアオリ文や漫画の通りの内容だし、内容的にも姉妹ラブラブで悪くないのだがこの漫画は「妹に彼氏がいる」(しかも結構出てくるしウザイ)という致命的な欠点があり全てを台無しにしてしまっている。

廃刊ダメゲーマー - 11月11日のニュース

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コメント

#354: Re: 佐野妙『Smileすいーつ(1)』/まんがタイムコミックス/芳文社

  • niagara_fall
  • (URL)
  • 2008年11月18日
  • 04時08分
  • 編集
HPにおまけがあったなんて全然知らなかった。ありがとうございます。

Smileすいーつですが、お姉さんの容姿からして今までに相当数修羅場があってしかるべき。それを見ている妹が飯田君を好きになっちゃったのは反面教師として生かしたのか?

完璧超人の姉、家庭的な妹、割り込めない男子…このテンプレはどこかで見たような…

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