2013年08月の記事

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怖がりと怖いもの知らず・極端なキャラによるドタバタなコメディ - 吉村佳『どろんきゅー(1)』

吉村佳『どろんきゅー(1)』

果歩は怖がりなのにオバケに好かれてしまう霊感少女。友人のアキは果歩の怖がっている姿を見るのが大好き。そんな二人のドタバタコメディ4コマ。芳文社『まんがタイムスペシャル』連載。

二人の掛け合いの面白さとオバケのおどろおどろしさが光る作品である。写真には写り込まれ、トイレや寝室は覗かれ、通学路では追いかけられ、街ではナンパされる。年がら年中・四六時中、オバケにつきまとわれて涙目になってしまう果歩の姿が哀しくも可笑しい。怖がる果歩をケータイのカメラに収めつつ、彼女にあえてオバケの存在を知らしめてさらに怖がらせるアキも笑いを誘う。二人の日常を彩る(?)オバケたちは赤黒い血にまみれてリアルに描かれており、二人を描く可愛い絵柄とのコントラストが映えている。

そんな二人の掛け合いの面白さを支えているのは、言わば二人のパワーバランスである。二人の関係はともすれば、怖がらせるアキが怖がる果歩を追い詰めるような歪なものに陥ってしまいそうに見えがちである。そこを、作者は二人を穏やかに調停するのではなく、むしろ二人のキャラを徹底的に振り切ることによって、その関係のバランスを絶妙に保っている。すなわち、果歩をとにかく怖がりな天然霊感少女に、アキを何に対しても怖いもの知らずにすることによって、二人の関係性に嫌らしさを持ち込むことなく、可笑しさを巧みに見せているのである。

吉村佳『どろんきゅー(1)』 p.42 右3・4コマ目

(図:吉村佳『どろんきゅー(1)』 p.42 右3・4コマ目)

例えば、プリクラの一本(上図)を見てみよう。自身のプリクラに大勢の幽霊が映り込んだことを嘆く果歩と、その姿を笑顔でケータイに収めるアキ。ここには、アキのことを怒る余裕がないほどに怖がりな果歩のキャラと、その言動を軽いノリで楽しむサディスティックなアキのキャラがよくあらわれている。キャラを中途半端に――果歩がアキの言動に冷静に怒ったり、アキが果歩に救いの手を差し伸べたり――することは決してない。果歩はどこまでも幽霊を怖がり、アキは幽霊に対しても友人に対しても怖いもの知らずである。こうした徹底的なキャラ付けによって、作者は二人の関係がこのまま確固としてあり続ける安心感を読者に与え、同時に二人のキャラの差異によって可笑しさを生み出しているのである。

怖がりと怖いもの知らず・極端なキャラによるドタバタなコメディ。作者初単行本作品にして、キャラ付けのセンスがキラリと光っている。雑誌連載ではビジュアル面も日々進化しており、二人はよりコミカルに、オバケはよりおどろおどろしくなっている。キャラとビジュアルの両方を獲得しつつある作者がいかなる作品を生み出していくのか。引き続き注目していくべき作品、そして作者である。

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神堂あらし『お隣さんゲーム』は三姉妹と三兄弟のキャラと関係性が絶妙 - 芳文社『まんがタイムジャンボ』2013年9月号

神堂あらし『お隣さんゲーム』

ゲスト掲載。鶴岡三姉妹と佐々野三兄弟はお隣さん同士。お互いに憧れて、惚れて、ちょっぴり妬いて。六人の間の複雑な想い想われの関係が切なくも可笑しい。舞子、圭介、蘭子、賢司のZ字関係(?)とかおいしすぎてたまらない。最初からこれだけ多くの人物が登場しながら、それぞれのキャラの明瞭さと、関係性の絡み合いによる引きが実に絶妙で、底知れぬポテンシャルを感じる。これはぜひ続きが読みたい。

あづま笙子『ほのかミステリーノート』

ゲスト掲載2回目。穂華の助手を始めたものの、彼女のことをつかみきれない潤。それぞれが素で動く様が自然とボケになるゆるやかなコメディは、しかし二人のキャラのデコボコさによって軽妙な味わいがある。端整な描線、豊かな喜怒哀楽の表情とあいまって、心地良い読みの作品であることよ。次号もゲスト。

春夏アキト『おとぎのシソン』

ゲスト掲載を経て連載化。昔話の動物が先祖の四人組、部室をゲット。自分たちの問題解決をそっちのけで、にぎやかを通り越してハイテンションに騒ぐ四人組が面白可笑しい。82ページから83ページにかけての4コマ目の濃密な顔芸とかもうね。

板倉梓『野村24時』のアットホームさに作者のプロ意識を見る - 竹書房『まんがライフオリジナル』2013年9月号

板倉梓『野村24時』

家庭教師&ビジネスマンな野村。普段とは違うキリっとした姿を見せる野村と、彼を茶化しつつもねぎらいと感謝の言葉を向ける三姉妹の姿が、可笑しくも心温まる。ホント、この作品は作者特有の毒というか、生や性や肉体や激情といった人間の生々しさが抑えられていて、アットホームなものになっているよなあ。ファミリー誌、それも最も保守的なもののひとつであるライオリに自身の作品を適応させる、作者のプロ意識が見えるようだ。

かつての輝きはもはや見る影もなく、ただ残るのは編集部への失望のみ - 角川書店『4コマなのエース』2013年9月号

この雑誌は名前から「4コマ」を取り除いた方がいい。今月号掲載の21作品のうち、自由コマ割りパートを含まない純粋な4コマ作品は7作品と、3分の1しかない。特に目を覆いたくなるのが、4コマ形式と自由コマ割り形式が同じ作品中に無秩序に用いられている様だ。4コマとは定型詩のようなものである。定型による制約は律動や技巧といった別の価値を生み出す。その価値を雑誌総体として最大限に生かしたものこそが4コマ誌と呼ばれるべきであろう。そして、4コマという定型を崩して別の形式と併用するならば、また別の価値が示されるべきである。しかし、この雑誌においては明快な価値が示されているようには見えない。せいぜい、キャラが4コマという狭いコマに囚われることなく描かることによってビジュアル性が向上している、というくらいである。

ここにおいて、なのエースと『まんがタイムきらら』系列誌との、特に『~ミラク』との差異が如実にあらわれる。ミラクは4コマという形式を崩しつつも、そこに読者の読みを誘導する巧みな表現技法を取り入れることによって、4コマ性とビジュアル性を高度に融合・昇華させた作品が生まれた。また、ミラク以外のきらら系列誌でも、4コマの枠を一切取り外しながらも4コマとして読むことができる新奇な作品が登場した。こうした価値を持った作品は、4コマという表現を専門としながら、いわゆる「萌え4コマ」のような新しい価値を求めてきた芳文社だからこそ成し得た技だと言えよう。面白い4コマ誌を出せるかどうかは、出版社の規模とは全く関係ないのである。

なのエースの林編集はかつて4コマトークイベントに出演し、萌え系や日常系における4コマ表現について高尚な言及をされていた。そのなのエースが、今やこの体たらくである。オリジナル新作4コマが粒ぞろいだった創刊時の輝きは、もはや見る影もない。林編集の件の言葉がなければ、私もなのエースのことをただ打ち捨てて忘れていくだけだっただろう。今はただ編集部への失望しかないし、今のまま滅んでいくならば雑誌総体に対する未練は一切ない。(遺される個々の作品のいくつかについては救われてほしいとは思う。)

篤見唯子『スロウスタート』の志温さんがお姉ちゃんキャラすぎて - 『まんがタイムきらら』2013年9月号

篤見唯子『スロウスタート』

花名の従姉妹の志温さんがお姉ちゃんキャラすぎてつらい。柔らかい言葉、優しい表情、家事の手慣れさ、花名ちゃん好きさ、そしてコマ枠からはみ出る豊満な胸。どれを取っても完璧なお姉ちゃんじゃないですかー! はぁ志温さんイイ……。最後にちょっとだけ黒さを見せてるのも意外性あってイイ……。ずっとついていきたい。

奥原まむ『スーパーな店員さん』はそろそろ連載で読みたい - 芳文社『まんがタイム』2013年9月号

奥原まむ『スーパーな店員さん』

夏祭りみゆんさん。売上アップのために物と人をテキパキ手配するみゆんさんの表情が生き生きしていて楽しい。扉の浴衣姿も麗しゅうございます。大きく丸い瞳と大きな口の笑顔は少女漫画的でもあるように思う。『まんがタイムファミリー』でも受け入れられそうな感じ。そろそろ連載で読みたいなあ。

『てんしんらん漫!』は原作者自身のためにも今すぐ連載終了するべきである - 双葉社『まんがタウン』2013年9月号

そろそろ声を上げるべきだと感じたので。

向・柚原ペアの『てんしんらん漫!』、連載開始から半年が経つにも関わらず一向に面白くなる気配がなく、作り手側の能力を疑わざるを得ない状況になってきた。十人並みの女の子学園モノで他の作品との差異(=価値!)が見えない。仮に他の作品との差異が漫才という題材にあると言うのなら、今月号95ページ左の一本は明らかに悪手だ。この言葉はキャラの行動でもって読者の心に想起させるべきものであり、キャラの言葉として言わせた瞬間に陳腐な「いい話」に堕ちる。それくらい、芸能を生業とする原作者であれば肌感覚で当然知っているものだと期待していたのだが、どうやらそうではないらしい(あるいは漫画という表現手法ではそれが発揮できないのかもしれない)。この作品の良かった探しをするならば、喜怒哀楽豊かなキャラとその可愛らしい絵柄くらいだろうか。

はっきり言おう。『てんしんらん漫!』は原作者・天津向自身のためにも今すぐ連載終了するべきである。本作はこの雑誌の紙面を6~8ページ、今月号に至っては番外編を含めて12ページを割いている。本作が終了すれば、そのページを可能性のある新人1~2名のために割くことができ、中長期的に見た雑誌の進歩と発展、ひいては4コマ界全体の価値向上につながろう。それは、読み手としても活動する原作者も、また生え抜きの新人に乏しいこの雑誌の編集者も、強く望むところではなかろうか。両者の勇気ある決断を願ってやまない。

橘紫夕作品が単行本発売記念で二本立て - 竹書房『まんがくらぶ』2013年9月号

橘紫夕『ひよわーるど』『でかポメ』

7月に発売された両作品の単行本を記念して二本立て。『でかポメ』は宗次郎が新しい動物病院に行くお話。新しい先生に触られるのを嫌がる宗次郎を飼い主が「ちゅう」でご機嫌取りする光景がシュールで笑いを誘う。診察を受けている最中の宗次郎の嫌々そうな表情も味わいがあって可笑しい。

『でかポメ』は完結巻である4巻が8月27日に発売予定。また、作者は8月16日に大阪・難波で開催される『天津向の4コマトーク vol.19 in 大阪』にも出演予定。チケットはチケットぴあにて発売中。

『マチ姉さんの妄想アワー』は紛れもない安堂友子ワールド - 芳文社『まんがホーム』2013年9月号

安堂友子『マチ姉さんの妄想アワー』

ゲスト。貧乏一家の姉が弟の子守に聞かせるおとぎ話は、どこかで聞いたことがあるようで、どこかちょっとズレている。裸の王様がムキムキボディを晒して女性からモテたり、木と藁で家を作る子豚たちの風景に箸とキャベツとトンカツを見出したりと、これでもかという強度で読者に襲いかかる安堂友子ワールド。それは、読者が想定するおとぎ話の期待に添いながらもわずかに外すという笑いの基本を押さえつつ、かつその外し方に明快な論理的枠組みが見える点にあろう。ただただ、上手いとしか言いようがない。おとぎ話は作者の強みを最大限に生かすことができる恰好の題材なのかもしれない。この作品はぜひ連載で読みたい。

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