2012年12月の記事

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冬コミにて『まんがタイムきららミラク』の表現論本を委託します

タイトルは『『まんがタイムきららミラク』の表現論、あるいは「4コマ漫画として読まれる」ということ』です。(10月の『よんこま小町9かいめ』にて頒布したものになります。)『純粋欲求系リビどる』と『夜森の国のソラニ』を中心にミラク作品の表現技法に触れるとともに、それらの表現が選び取られた理由を考察した本です。

委託スペースは3日目東ハ18b《4研》です。ぜひ皆様お立ち寄りください。

以下に、本の中からいくつかの箇所を断片的に引いてみます。

作者らはイラスト的に連続するコマの間を巧みなカメラワークで接続することにより、読者の〈テレビアニメ的想像力〉を励起させ、連続するコマを4コマ漫画として受容させることを試みたのである。

『『まんがタイムきららミラク』の表現論、あるいは「4コマ漫画として読まれる」ということ』p.5

『ミラク』の作者と編集者は、自分たちが世に送り出す作品を、読者が4コマ作品として読んでくれることを信頼しているのである、と。彼らの作品が形式から逸脱していようと、読者がそれを4コマ漫画と見なす想像力を持っていることを信じているのである、と。

『『まんがタイムきららミラク』の表現論、あるいは「4コマ漫画として読まれる」ということ』p.8

4コマ誌においては、4コマ漫画ではないと断りが入れられていない作品は、全て4コマ漫画として読まれるのである。

『『まんがタイムきららミラク』の表現論、あるいは「4コマ漫画として読まれる」ということ』p.11

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4コマオブザイヤー2012投票(にかこつけて今年出会った4コマ作品を幅広く振り返る)

レギュレーション(主催サイトより引用)

【新刊部門】

2011年12月1日以降から2012年11月30日までに発売された"1巻の"4コマ漫画単行本から5作品

【既刊部門】

2011年12月1日以降から2012年11月30日までに発売された"2巻以降"の4コマ漫画単行本から3作品

「世界よ、これが4コマだ。」4コマ総決算『4コマオブザイヤー2012』開催のお知らせ - 素晴らしい日々

新刊部門

はりかも『夜森の国のソラニ(1)』(感想記事
心に傷を負った者が迷い込む夜の国・夜森に記憶を無くして迷い込んだ少女・ソラニ。無くした記憶を探す彼女の長い夜が始まる――。神秘的な世界観と登場人物の仄暗さを描く、コマぶち抜きと視線誘導の技法が絶妙。イラスト性と漫画性を高度に融合させた漫画表現に4コマの新時代を見る。
来瀬ナオ『半透明勤務薄井さん(1)』
新社会人の麻生さんが務めるオフィスでは、幽霊で身体が透けている薄井さんが働いている――。麻生さんと薄井さんの仲良き掛け合いが楽しく、非現実的存在たる薄井さんを自然に受け入れる周囲の温かい人々に心和む。いつまでも続くかのような安定した関係性と日常に深い安心感を覚える。
佐野妙『しましま日誌(1)』
離島の高校に採用された新人女性教師。生徒たちと早く馴染みたいが、女子生徒間の冷たい争いになかなか踏み込めず――。ドラマ的なストーリーによる作品の快楽性は『森田さん』のそれと対極にありながら、どちらも女子コミュニティを描いている点が興味深い。作者作品の本質が垣間見える一作。
湖西晶『うしのこくまいる!(1)』
ワラ人形に釘を打つ霊能力者の前に現れたワラ人形の女神。その体に釘を突き刺すと人を呪えるが――。記号的なエロスとミステリアスなファンタジーの合わせ技による読後感が可笑しくも妖しい。『きらら』と『ぱれっと』のそれぞれにおける作者の存在感が合流した集大成的な作品である。
あづま笙子『かてきょん(1)』
おバカな女子高生・らいらの新しい家庭教師は天才小学生のカムイくん。年上の余裕を見せるけど勉強は大の苦手ならいらと、先生として真面目に振舞うけどシャイさゆえにらいらに振り回されるカムイの凸凹な関係が可笑しい。師弟以上恋人未満なエピソードの数々も優しく胸を締め付ける。

既刊部門

荒井チェリー『ワンダフルデイズ(6)』、みなづき忍『ひみつの花園(2)』、カワハラ恋『東京!(2)』。いずれも最終巻。『東京!』は結果的に最終巻になってしまって残念……。同人誌でまとめられるのを待ちたい。

【番外編その1】再録4コマ同人誌部門

ここからは番外編。まずは、印象深い再録4コマ同人誌をピックアップ。COMITIA頒布作品のいくつかは投稿したPush&Reviewへのリンクを。

吉谷やしよ『ゆたんぽのとなり 左』《ヨッシー工房(新)》
芳文社『まんがタイムスペシャル』連載の表題作を収録。昨年12月の冬コミにて頒布。「となり」だから「左」。作者らしからぬほのぼのさと作者らしい破天荒さの同居はファミリー誌連載作品ゆえか。『右』は今年の冬コミにて頒布予定。最近の作者は講談社『月刊少年マガジン』にて歴女4コマ『レッケン!』を連載中。
かたぎりあつこ『ハッピーカムカム 完全版(1)』『~完全版(2)』
芳文社『まんがタイムジャンボ』連載の表題作を収録。『完全版(1)』は5月のCOMITIA100にて、『完全版(2)』は11月のCOMITIA102にて頒布。2009年8月の商業1巻発売とほぼ同時期に連載が最終回となり、その後しばらくして商業2巻が発売されないことが決定し、同人誌化を今か今かと待ち続けてついに待望の頒布。唯我独尊的に女子女子しい女子の鏡的な女子たちの可笑しさよ。
櫻太助『いれいざといっしょ。ぷらす!』《餅助》(Push&Review
芳文社『まんがタイムきらら』掲載の文房具擬人化4コマ『いれいざといっしょ。』などを収録。5月のCOMITIA100にて頒布。きらら掲載が2006年なので実に6年越しの刊行。小学生の授業をネタにした消しゴムさんやシャー芯さんらの擬人化描写が面白可笑しい。
逸架ぱずる『おなじ穴のムジナ・上巻』《ぱずる座》
双葉社『メンズヤング』連載の表題作を収録。8月の夏コミにて頒布。女子高生とマスコットキャラ的なタヌキが繰り広げる児戯的な日常が面白可笑しい。作者は4コマ作品に関しては不遇続きだったけど『こーしょー19さい』でようやく報われたように思う。『下巻』は冬コミにて頒布予定……か?
みなづき忍『太陽くんの受難』《Random 6》(Push&Review
芳文社『まんがタイムジャンボ』連載の表題作を収録。11月のCOMITIA102にて頒布。苦労人な主人公・太陽くんと周囲の自由奔放な女性陣の掛け合いが可笑しく、牧歌的な職場風景にほのぼのとする。最近の作者はG-modeのウェブコミックサイト『COMICメテオ』にて女子高生百合ショート『生徒会のヒメゴト』を連載中。
310『がんばれ!生徒会長さん』《ROOM#310》(Push&Review
芳文社『まんがタイムオリジナル』掲載の表題作を収録。11月のCOMITIA102にて頒布。無防備な生徒会長の愛され感に乙女ゲーム的想像力を見る。現在の作者は芳文社『まんがタイムファミリー』にて『2倍まもります!』がゲスト掲載中。この繊細な感性は評価されてほしい。

【番外編その2】創作4コマ同人誌部門

続いて、印象深い創作4コマ同人誌をピックアップ。

ランドルトたまき『記号のペシミズム』《ルート十二面体》
数学記号、幾何図形、英数字、約物など、様々な記号による4コマ漫画。記号の図像性と意味性が記号の自分語りによって融和し、また、その多義性と差異性が4コマと言う定型反復様式によって暴かれる様には感嘆の一言。高度に言葉遊び的であると同時に批評的でもある。
丼『どうにもこうにも』シリーズ《お天気お兄さん》
アホ、普通、オタクな三バカ男子校生の4コマ。三人がワイワイする様が賑やかで楽しく、端整な描線と相まって青春模様が爽やか。最新巻の5巻は体育祭編。晴れ舞台にはしゃぐ者、テンパる者、倒れる者と、クラス一丸でおバカに進む体育祭の模様が面白可笑しく、また、クラスメイトのミスを責めない空気が温かい。仲の良さに支えられた日常が優しい。

【番外編その3】今年覚えておくべき作品

最後に、単行本化されているか否かに関係なく、今年これだけは覚えておくべき(まさに of the year な)作品として、4224『グレーゾーン』を挙げておきたい(芳文社『まんがタイムきららMAX』2012年8月号掲載・下図は96ページより)。4コマの枠が無いにも関わらず「4コマ漫画として読める」今作は、それが4コマ作品に掲載されていたこと(=4コマとして読まれ得る文脈を有していたこと)、読者が4コマを読むリテラシを有していたこと(=「4コマ雑誌文化」が十分に醸成されていたこと)、そしてフキダシなどの配置により制御された視線流が一般的な4コマ漫画のジグザグな視線流と同じであったこと(=4コマ漫画として読める仕掛けが施されていたこと)、これらの条件の元に成立した壮大な実験作であり、4コマ表現の地平を切り開いた作品として記憶・記録されるべきだろう。

ここで挙げられなかった作品は――

『4コママンガのススメ2012年版』で書けたらいいな。

子供に対する想像力に支えられた温かい物語――楠美マユラ『お母さんは水の中 ぴよ』

きんぎょとひよこの親子の物語、2年半ぶりの待望の続刊にして全ページ描き下ろし。連載誌『ハムスペ』『あにスペ』が既に休刊していながら続刊が刊行されたことに、まずは作者および編集者を始めとする関係者の方々に感謝したい。続刊ながらも、第一話としてキャラ紹介が掲載されているため、今巻から読んでも問題ないだろう。

今巻は、ひよこの子供心の描写が心を打つ。例えば第二話、きんぎょが読んでいるキャラ探し絵本(ウォーリーをさがせ!のようなもの)に、ひよこが鉛筆で答えをマルつけしてしまうエピソード。ひよことしては良かれと思ってやっているのに、きんぎょはマルを消しゴムで消してしまう。行為を否定されたことにより親切心を否定されたと感じたのだろう、ひよこは絵本を放り投げ、二匹はケンカしてしまう。あるいは第十五話、怖い絵本を読む二匹のエピソード。きんぎょがお昼寝してしまったので一匹で絵本を読み進めるひよこだったが、クライマックスの「ひとりであけるとおばけが出てくるよ」という言葉についに怯えてしまう。「あける」という行為の対象は絵本の中で描かれる扉なのだが、ひよこはそれを絵本のページだと混同したのだろう。いずれも、自己と他者の間、または現実と空想の間に境界線をまだうまく引けない子供の行動原理を的確に描いている。

子供心の的確な描写と併せて、今巻ではひよこの成長も温かく描かれる。友達との「ひみつきち」によって、きんぎょにもナイショの秘密を持つ。苦いコーヒーを平然と飲むきんぎょを見て大人に憧れ、大人たちの行動を真似したお手伝いをする。高い木から下りられないきんぎょたちを助けたくて、言葉ではそれを上手く説明できなくても、必死の行動によって目的を果たす。いずれも、子供という存在に対する想像力(あるいは観察力かもしれない)なくしては描き得ない、素朴かつ具体的な成長描写である。

そう、今巻の魅力はまさに、子供に対する想像力に支えられている。そしてこれは前巻の魅力――きんぎょとひよこという風変わりな親子や、ひよこのおっさんという形容矛盾的なキャラについての、存在の〈異端〉さゆえのドラマツルギー――に通じるところがある。それはすなわち、描かれるキャラに対する想像力である。現在の特質(=characterの原義!)から過去や未来を想い浮かべ、または入力に対する出力を想い浮かべる力である。ここにおいて、今巻と前巻は接続される。創作の根本のひとつとでも言うべき想像力に、この作品の魅力の根源があるのだ。

子供に対する想像力に支えられた、きんぎょとひよこの風変わりな親子の温かい物語。二匹のエピソードをもっと読みたくなったら、公式Twitterにて公開されている4コマを読んだり、前巻を手に取って欲しい。

謝辞

献本を頂きましたイースト・プレスの小林様に深く感謝申し上げます。連載が終わってもなお続刊が刊行されたことを、読者としてとても嬉しく想います。

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