松本ミトヒ。『メガミのカゴ(1)』/まんがタイムKRコミックス/芳文社

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松本ミトヒ。『メガミのカゴ(1)』表紙

芳文社『まんがタイムきららフォワード』連載。舞台は女子校。メガネ・真面目・オールマイティとどう見ても委員長キャラの友人・明美が委員長をやっていないのはおかしいと嘆くオタク少女・南。じゃあ本当に委員長にしちゃおうと生徒会長を巻き込んで作っちゃいました「乙女の鏡委員会」。悩みを花カゴの中に打ち明ければ委員長の明美さんが解決してくれるよ!

南を始め友人たちとともに,毎回異なる依頼者の悩みを解決していく中で,明美のオールマイティさを見せてくれる。世話好きでスポーツ得意で演劇もクールにこなす明美(歌はダメだけど)は,確かに委員長の肩書きにふさわしいキャラ。

でも私はここで,この巻の読みどころは南にある,と主張したい。いやもちろん二人や周囲の友人あってこそのキャラたちであり話であり作品であるんだけど,この巻での南は他のどのキャラにもましてエキサイティング。

南は決して明美を場を茶化すだけの存在ではない。それを確信させてくれるのが演劇部のシンデレラのお話。134ページからクライマックスまでの7ページは神がかり。王子様の南がシンデレラの明美を見染めるこのシーンでの南のアドリブは,オタクな南でなければできないと思わせるだけでなく,普段の姿からは想像しがたい「やるときゃやる姿」を存分に見せてくれる。最高の形で読者を裏切ってくれちゃって。

現在の連載は舞台の女子校が共学になるという流れ。私なんかは素敵な男の子と彼女たちのお話なんかも読みたかったりします。

おとなり感想

南のキャラに触れている感想を。

女生徒達のお悩み解決の過程も、各人のしっかりしたキャラ立てと、南が囃して明美がきれいにまとめるという息のあったやりとりのお陰で、短い尺でもメリハリ効いたエピソードに仕上げられており、隙のない話作りであることだなあ、と。

松本ミトヒ。『メガミのカゴ』1巻 - 枳棘庵漫画文庫

委員長の宮本さんをイジる役目を、彼女に萌えを求めるオタク少女・南ちゃんが担当。二人の意識のギャップを楽しむというか、まったく噛み合ないんじゃないかと思われる二人のやりとりが面白いです。(少し、こなたとつかさのやりとりと共通した感じか?)

漫画まみれラノベづくし ニワトリが先か卵が先か。役職が先か雰囲気が先か。松本ミトヒ。『メガミのカゴ (BASKET OF GOODESS)』第1巻

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メガミのカゴ(1) 7.28 SALE

蕃納葱『教艦ASTRO(1)』

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蕃納葱『教艦ASTRO(1)』

牧「あれ―― プリントどこしまったっけ」

烏丸「二段目の引き出し 手前のファイルボックス」

牧「あっ 本当だ」

南雲「……くわしいですね」

牧「すげー エスパーだ」

烏丸「副担ですもの バックアップはバッチリよ」

南雲「牧ちゃん ときどき後ろ注意した方がいいよ」

牧「後ろ?」

蕃納葱『教艦ASTRO(1)』 p.24

「先生」のイメージからかけ離れた破天荒な先生たちの日常。先生だって人間だもの。

蕃納葱「教艦ASTRO」は,芳文社『まんがタイムきららキャラット』連載の4コマ漫画。朝潮総合高校に勤める先生たちの日常を描いた作品。

「教艦」を冠する作品だけに先生たちが主役なわけだけど,この先生たちが只者ではない。まずは主要な先生を確認しよう。

牧 和泉
単行本表紙も務める,新任の女性保健体育教諭。男勝りでさばさばした性格。一人称も「オレ」。クラスの生徒の名前を覚えられない。
南雲 有子
新任の女性国語教諭。学校ではなぜかいつも和服。見た目に似合わず大食漢。隠れ腐女子。
烏丸 かなめ
女性外国語教諭。新任の牧先生にアブナイ視線を向ける。
荒井 準名
血に飢える養護教諭。保健室の主。サボリ魔でゲーム好き。非常勤講師を勤める牧の兄とは恋人同士。

さて,既にこの時点で,普通の作品に登場する先生たちが持つ真面目やストイックというイメージから,この先生たちはちょっとかけ離れていることが分かる。

そしてこの作品,先生と生徒の触れ合いはほとんど全く描かれない。職員室,仕事後の居酒屋,修学旅行の先生部屋など,描かれるのは先生の密室,そして普段は生徒に見せることのない先生の素顔。

そこでの彼/女らは特別でもないただの大人だ。にもかかわらず,その言動が常識外れでおかしく見えるのは,先ほど述べた「先生」に対するイメージがあるからだろう。ある意味,主題が「先生」に決まった時点で,この作品は勝ちだったのかもしれない。

そして常識外れと言っても,どこか人間味もあるところが憎めない。酒に酔いつぶれたり,校内で迫り迫られたり,メガネ男性教師に腐った妄想をしたり。単行本帯にもあるように,先生だって人間だもの。そこには不思議な安心感さえ漂う。

きらら作品らしく,ちょいエロさも忘れない。帯の煽りにある うら若き女教師たちが官能を刺激する も,ある意味間違いではないだろう。事実,牧先生は健康的にエロい。ただし,先生と生徒,というシチュエーションは存在しないのでご注意を。

大和狸『オオカミの手かします!(1)』

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大和狸『オオカミの手かします!(1)』

小春(あ 子犬だ かわいそう… お腹すいてるのかな)

(小春,子犬にパンを与える)

小春(…マンガとかだと人間に変身とかするんだろうな…)

ハチ(子犬)「ありがとうございます!」

小春「なーんて え?」

ハチ「危うく飢えて死ぬところでした!」

小春(本当になった!?)

大和狸『オオカミの手かします!(1)』 p.9

ベーシックにキャラたちのドタバタを描く。そして犬耳。個人的にはかなりの拾い物。

大和狸「オオカミの手かします!」は,芳文社『まんがタイムきららMAX』連載の4コマ漫画。人間と友達になりたくて,妖怪の里を離れて街にやってきた狼の妖怪の女の子・ハチ。お腹が空いていたところに助けられた女の子・小春と友達になり,小春は帰る場所がないハチを自分の家に招き入れる。こうして小春とハチの日常が始まった,という話。

表情がうまい。ドジだけど頑張りやなハチの喜怒哀楽が,漫画的な表情でコロコロと変化して描かれる様が楽しい。ギャグは淡々としたツッコミが基軸。シンプルに肩張らずに読めるところが嬉しい。ギャグ漫画としてすごくベーシックなところにある作品だと思う。

これが基本となって,小春とハチの絡みがメイン描かれ,そこに個性的なサブキャラとのやりとりが入る。ハチに可愛い服を着せるのが好きな小春の母,コワモテ顔なのに少女漫画家の小春の父,ハチのことが好きな友達の妖狐・イナリなどなど。みんなのおかげでかき回される彼女たちのドタバタな日々が面白く,それでいて彼女たちの中で閉じた世界が妙に心地良い。たまに描かれるハチの物憂げな表情とコスプレ姿はサービス精神の現れ。

多分に犬耳バイアス(狼なのに!)がかかっている気がしなくもないわけだけど,個人的には本作は『まんがタイムきららMAX』における拾い物だと思う。今後の連載にも期待。

カバー裏にはおまけ漫画あり。イナリの姿が可愛い。

一智啓『ももえん。(1)』/まんがタイムKRコミックス/芳文社

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一智啓『ももえん。』1巻

ひょんな事から女子高に入学することになったオレ 野沢由貴(15)

悠木「もー いつまで鏡見てんの?学校いくよっ」

由貴「…今年から共学のハズなのに なんで男子の制服がないんだろう…」

悠木「面白いからじゃない?」

一智啓『ももえん。(1)』 p.10

倒錯の桃園へようこそ。

一智啓「ももえん。」は,芳文社『まんがタイムきららMAX』にて連載中の4コマ漫画。ひょんな事から,姉・悠木と同じ高校に女装をして通うことになってしまった少年・野沢由貴。しかし彼が美少年であるがゆえにその事実には気づかれず。彼の友達で同じく美少年の蓮,どう見てもゴリラにしか見えないのに,たまに超絶の美少女に変身する男の子・真(通称まこちん)と共に,ハーレムだけどヒヤヒヤの日常を送るという話。

設定の時点で既にぶっ飛んでるわけだけど,話はさらに奥が(いや,業が?)深い。通学路の交差点で出会い頭にぶつかった先輩の女生徒に恋する由貴くん,そして下級生の女の子からなぜか好かれる由貴くん。元々の性で見れば普通の恋のはずなのに,姿は両方とも女の子。これは百合なのか?違うのか?いずれにせよイケナイ雰囲気が漂っている。

ここにさらに「ひょっとして由貴くんて可愛いんじゃないか……?」と思った暁にはもう訳が分からない。倒錯しているのは由貴くんを始めとする登場人物じゃなくて自分?でも本当可愛いんです。抗えないんです。……はっ!俺は今何を!

そんなこんなでドタバタ展開が繰り広げられるんだけど,実はこの作品,何の説明も無しにシーンが飛ぶことが多くて,微妙に読みにくい。じゃあ作者は構成が下手なのかというとそういう風にも感じなくて,むしろこれって作者の女性的感性なんじゃないかなあとも思う。女三人集まってハイテンションでおしゃべりする姿を傍目で眺めているあの感覚。ああ,これって,カザマアヤミ「ちょこっとヒメ」の時にも感じたような。

ともあれ,こんな感覚を感知しやすいアンテナを持っちゃってる自分としては,この作品はとても心地いい。今後の連載にも期待。あと,誰かがジェンダーの観点から深く語ってくれることを切実に希望。

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石見翔子『スズナリ!』1巻

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石見翔子『スズナリ!』1巻

猫耳と百合。姉妹のスキンシップが微笑ましく,時にエロティック。

石見翔子(いわみしょうこ)「スズナリ!」は,芳文社『まんがタイムきららMAX』にて連載中の4コマ漫画。普通の女子高生・高村楓(表紙左)。ある日彼女が目を覚ますと,目の前に自分と瓜二つの猫耳少女がいた。鈴(表紙右)と名乗る彼女は,なしくずし的に楓の妹ということになり,高村家の一員となる。そして鈴は楓と一緒の学校に通いだす。

話は基本的に楓と鈴の日常。楓にべったりな鈴と,そんな鈴に振り回され,少し疎ましく思いつつも,本当は大切に思っている楓。この二人の姿が何とも微笑ましい。そして,楓に対してちょっと過剰なスキンシップを求める鈴の姿がほのかにエロティックでもある。単行本カバー裏では,鈴が楓にほっぺチューをするなど,素晴らしいほどの百合分が含まれている。

周囲のキャラも個性的で楽しい。楓の父母は夫婦ラブラブで,それを見た鈴が真似をして楓に対して同じ事をする。まさにこの親にしてこの子あり(実際には子じゃないけど)。アグレッシブなクラス担任,萌えにこだわるクラス委員長の男子生徒,時々何かが降りてくるクラスメイトの女子生徒は,2人の学校生活を痛快にかき回していく。

その一方で,作中では楓と鈴の過去が時々見え隠れする。雨の中傘をさす少女,濡れたダンボール箱,そして神と思しき存在。どうやらこの2人(1人と1匹?)には悲しい過去があるようだけど,それは今後も少しずつ描かれていくのだろう。幸せな結末を願わずにはいられない。今後の連載も楽しみ。

とらのあなでは単行本購入特典として小冊子『スズナリ! mini』を配布中。ゲスト執筆陣の寄稿の他,石見氏描き下ろしの「スズナリ! 1.5話」を収録。ゲスト執筆陣は阿部川キネコ,荒井チェリー,一智啓,白雪しおん,すか,鈴城芹,ナントカ,未影(掲載順,敬称略)。

とらのあなではまた,『スズナリ!』1巻を含む9月27日発売のKRコミックス,および現在発売中の『まんがタイムきららキャラット』2006年11月号の購入者にイラストカードを配布中。この『キャラット』11月号には「スズナリ!」がゲスト掲載。単行本で石見氏を知った方は,こちらも読まれてみてはいかがだろうか。

白雪しおん『ROM-レス。』1巻

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白雪しおん『ROM-レス。』1巻

静夜「何ですかこの娘はーっ!?」

有賀「よくぞ聞いてくれました! 実はこれ 俺がつくったゲームなんだっ」

静夜「えっ」

有賀「かわいいあの子と画面の外でもラブラブしたいっ そんな奴らのためのソフト! その名も『ドキ☆ROMっ娘コミュニテイー』」

静夜(ぷしぅ…)

有賀「ゲームした事ない静夜にはシゲキが強かったかなー」

潤架「てか 裸」

白雪しおん『ROM-レス。』1巻 p.10

『きらら』的正統派作品。しかし,単行本化までの道のりは長かった。

「ROM-レス。」は芳文社『まんがタイムきらら』にて連載中の4コマ漫画。小さなレストラン「こねこ館」を経営する河村家三兄妹。しかし長男の有賀(ありが)と長女の潤架(うるか)はぐうたら者で,店をぎりぎりの状態で切り盛りするのは次男の静夜(しずや)だけ。そんなある日,有賀が作ったゲームの中から女の子が飛び出してきた。久凪(くなぎ)と名づけられた彼女は,レストランでウェイトレスをすることになったが……,という話。作者の白雪しおん氏は,今作が初の単行本。

キャラ設定から絵に至るまで『きらら』連載作品らしい作品。しかし要所で笑い所は押えている。話はピュアっ娘の久凪とヘタレ眼鏡の静夜を中心に,有賀と潤架,そして静夜の元カノの千奈がかき乱すという感じ。ほのぼのした中に,たまにちょっと毒が入ったツッコミが飛ぶ。オチとデフォルメされたキャラとが相まって面白い。

しかし,単行本化までの道のりは長かった。本作の連載開始は『きらら』2004年6月号。実に2年以上前だ。収録されている話も『きらら』2005年6月号のものまで。他の人気作品の単行本化のあおりを受け,単行本化が遅れた作品と言えるかもしれない。それでも,単行本さえ出ずに打ち切りの憂き目に遭う作品が多い『きらら』では,単行本化まで漕ぎ着けられた事は実に幸せなことだろう。

単行本描き下ろしとカバー裏には,作者のトークを収録。本編と合わせて読むと面白い。『きらら』系列誌でのゲスト掲載作品も収録されればもっと嬉しかったが,それは続巻にて期待しよう。

白雪氏は本作以外にも,芳文社『まんがタイムきららMAX』にて「にこプリトランス」を連載中。とらのあなにて単行本購入者に配布中の小冊子では「ROM-レス。」と「にこプリトランス」の登場キャラが共演している。本作で白雪氏に興味を持たれた方は「にこプリトランス」の方も読んでみるといいだろう。

荒井チェリー「みおにっき」「ゆかにっし」

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荒井チェリー「みおにっき」 荒井チェリー「ゆかにっし」

前田さんちはファンシーショップ もちろん休日や祝日もやっています

結花(年末年始もGWもどこにも連れていけなかったし まだ小さい実音にはさみしい思いさせてるよね…)

実音「祝 休日は出かけたくないよー 混んでるもん それに繁忙期は料金高くなるんだよ 冗談じゃないよー」

結花「…私は割と行きたいな」

実音「ダメー!! 行くなら平日のレディスプランとかにしてね!」

(荒井チェリー「ゆかにっし」 p.62 「休日は」より)

一か月前に発売された単行本なので今更感が漂わなくもないですが,久しぶりの単行本感想なのでアップ。

それぞれ芳文社『まんがホーム』『まんがタイム』にて連載されていた作品。ファンシーショップを経営するおっとりした長女の結花(ゆか),目つきは悪いけど料理が得意な長男の克樹(かつき),小学生だけど節約好きでしっかりもので家族の大黒柱の実音(みお)の,前田家三人家族の日常を描いた作品。

一部書店では両単行本の同時購入者に特典小冊子『みおとゆか』を配布。小冊子の執筆陣は荒井チェリー,藤島じゅん,白雪しおん,安堂友子,藤凪かおる,真田一輝(順不同,敬称略)。

荒井氏の作品はどれもキャラの強烈な個性と異様なまでの魅力の高さを武器にグイグイと読ませる作品だと思ってるけど,「みお」「ゆか」も例外ではない。そしてそこから生み出される話が,さらにキャラの魅力を高めるというスパイラル。ある意味では一家の日常生活を眺めるだけの漫画を,かくも楽しく,そして心地いいものにしてしまうなんて。恐ろしい,荒井氏は本当に恐ろしい……。

登場人物が両作品で同じこともあって,両作品の話は一部重なっている。さらに実音の小学校の友達の桜や優,克樹のバイト先の満腹食堂など,芳文社『まんがタイムきらら』および『まんがタイムきららキャラット』にて連載中の荒井氏の作品「三者三葉」と重なる部分もある。「三者三葉」を既に読んでいるのならニヤリとすること請け合い。さらに小冊子では双葉や辻(兄)が出てきてもっとニヤニヤしたり。

あと,話とは関係がないけど,荒井氏の作品の女性キャラはみんな服がおしゃれだなと思う。特に結花のかわいさと言うか体のラインの色っぽさは異常。ああ,本当に関係がないや。

荒井氏は現在,芳文社『まんがタイムきらら』と『まんがタイムきららキャラット』にて「三者三葉」を,『まんがタイムきららMAX』にて「ワンダフルデイズ」を連載中。8月28日には「三者三葉」4巻が発売。また,現在,一迅社からTYPE-MOON作品集「MOON CHILD」が発売中。こちらは,自分は原作をほとんど知らずに買いましたが,ノリだけで結構楽しめる作品集でした。

湖西晶「お湯屋へようこそ」

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湖西晶「お湯屋へようこそ」

ナガユ「ホントにできの悪い嫁だよ」

トージ「慣れるまではしかたないよ でもOLとしての経験も役にたってるよ」

ナガユ「電話の対応はてなれたもんだね」

ゆや「はい 今ですか? 今はフロントで業務をしておりますが はい 何でしょうか 下着の色?」

トージ(何の電話だ)

(湖西晶「お湯屋へようこそ」 p.17 「はきはき答えよう」より)

芳文社『まんがタイムラブリー』にて連載されていた4コマ漫画。山の中の温泉旅館「奥山」を切り盛りするトージと,その妻で元OLの若女将・ゆや。トージの母のナガユにいびられながらも,ゆやは旅館のために頑張って仕事に励む,という感じの話。現在,連載は終了し,単行本もこの1冊で完結。『まんがタイムきらら』系列誌での掲載歴はないけど,レーベルはKRコミックス。

嫁姑という古くからあるテーマを,湖西氏らしく明るく描いている。キャラも話も良心的で安心して読める作品。最終回もその前の話から準備がされ,最終回らしく締められている。4コマ誌連載作品には突然の打ち切りに会う作品がしばしばあることを考えると,この作品は幸せな作品だったと言えるかもしれない。

湖西氏の最新刊「かみさまのいうとおり!」3巻は6月27日に発売。同作品はドラマCDも現在発売中。現在は産休で『まんがタイムきらら』および『キャラット』での同作品の連載は休載中の湖西氏。現在は育児の方に忙しいでしょうが,復帰後はまた元のように頑張って欲しいなと思います。

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きゆづきさとこ「棺担ぎのクロ。〜懐中旅話〜」1巻

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きゆづきさとこ「棺担ぎのクロ。〜懐中旅話〜」1巻

ニジュク「まっくろいひとの」 サンジュ「くろいひとさん」

ニジュク・サンジュ「あなたはだぁれ?」

クロ「…………じゃあ 黒いから 旅人の クロ かな?」

(きゆづきさとこ「棺担ぎのクロ。〜懐中旅話〜」1巻 p.35より)

芳文社『まんがタイムきらら』にて連載中の4コマ漫画。「クロ」と名乗る,いつも背中に棺桶を担いでいる旅人と,彼女とともに旅をするコウモリのセン。旅の途中で出会った二人の子供,ニジュクとサンジュとともに,旅先で事件に巻き込まれつつも,彼女たちは旅を続ける。その目的は――,という感じの話。

正直,『きらら』での連載時にはあまり面白さが分からなかった自分も,こうして単行本になってまとめて読んだことで面白さが理解できた。で,その面白さが尋常じゃない。読み進めていくごとに話にぐいぐい引き込まれる感じ。こんな感覚を味わったのは,業田良家「自虐の詩」下巻を読んだとき以来。かなりのショック。

1コマの情報量がありえなく多い。セリフもキャラも背景も書/描き込みが尋常じゃない。普段はこういうのは自分は苦手。だけどこの作品では,クロの謎が断片的に語られ,そして明らかになっていくそのストーリーに引き込まれてしっかりと読み込んでしまう。旅先で出会う魅力的なキャラクターの数々も,物語に深みを与えている。

こういうシリアスなストーリーを4コマで描いた作品としては,この作品や「自虐の詩」以外には,小池田マヤ氏が得意とするのかな? 私はつねづね,これらは「4コマ形式じゃなくてもいいじゃん」と思ってたけど,その考えが違うことも「クロ」を読んで分かった。むしろ4コマ形式であることで,作品にかろうじてギャグ漫画としてのの余地が残ること,それによって作品にリズムが生まれることが重要なんだと気づいた。実際この作品中には,シリアスなストーリーの間にギャグが織り交ぜられていて,それがアクセントとなって作品のドラマ性が高められていると思う。

……何かこれ以上書いても嘘くさくなりそうだからやめとこう。しかし久しぶりに心を打たれた作品だった。雑誌連載時にはうまく読み込めなかったキャラの設定もこれでバッチリだし,今後は雑誌でもしっかりと追っていこう。

きゆづき氏は芳文社『まんがタイムきららキャラット』でも「GA」を連載中。とらのあな無料情報誌『とらだよ。』では,その派生作品「GA材置き場」を連載中。現在63号が配布中。また,きゆづき氏は他にも,現在発売中のエンターブレイン『週刊ファミ通』の「ゲームの殿堂」コーナーにて,本人がキャラ作画を務めるゲーム,スティング「ユグドラ・ユニオン」の4コマ漫画を短期連載中。5月第1週発売号まで連載予定の模様。きゆづき氏の活躍には今後も要注目。

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鈴城芹「看板娘はさしおさえ」1巻

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鈴城芹「看板娘はさしおさえ」1巻

匡臣「お着物の査定 これくらいになります 期限と利子ちょっとおまけしておきますのでどうぞお早めに」

客の老婦人「いいんですか?」

匡臣「こんな大事なお着物 いつまでもお預かりしてたら おじいさんにうらまれちゃいますよ」

桜子「亭主がああなんだけど繁盛させられる? ウチの店」

十夜「…努力はしてみます」

(鈴城芹「看板娘はさしおさえ」1巻 p.27 「薄利 VS ご利益」より)

芳文社『まんがタイムきららMAX』にて連載中の4コマ漫画。舞台は町の質屋。切り盛りするのは看板娘の早潮小絵(さしおさえ),妻に頭が上がらない父の匡臣(まさおみ),謎の過去を持つ母の桜子(さくらこ)。この店にある日行李が持ち込まれるが,その行李には割烹着を着た商売繁盛の女の子の幽霊,十夜(とよ)が憑いていた。家族は行李を買い取り,行く場所がない十夜は質屋で働くことになるが――,という感じの話。

とにかく淡々と家族の日常が描かれている作品。話に起伏はないんだけど,むしろそのゆるやかな雰囲気がいい。そしてその分ギャグの切れ味は鋭い。特に女性陣から匡臣に向けて放たれるセリフの数々は痛烈。しょっちゅうエロネタを繰り出す桜子も,それが不思議と不快にならない。

行李の中に衣装を入れると,姿がその衣装に変わってしまう十夜にも注目。割烹着以外にもボンテージやエプロンや水着に衣装が変わるところは,『きらら』系列誌掲載作品らしくサービス満点。

1コマ1コマの情報量が多いのも特徴。じっくり読むことで味わいが深くなる4コマ漫画だと思う。パラパラサッサと読み進めていくのはもったいない作品。

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