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イラスト性と漫画性が高度に融合した、神秘的な世界観の4コマ漫画――はりかも『夜森の国のソラニ(1)』

起きたくない人間が迷い込む夜の国・「夜森(よるもり)」。ここに記憶を無くした一人の少女が迷い込む。やはり名前を「夜森」という夜森の国の管理人たる少女は、彼女を知人に似ているとしながらも、柔らかな笑顔を見せる彼女に、悲しそうな顔で別人だと漏らす。私は誰なんだろう、私は何を忘れてるんだろう――。夜森の国の住人たちから「ソラニ」という通り名を与えられた少女の、無くした記憶を探す長い夜が始まる。

本作は、言わば女性的な〈ガンガン的想像力〉に満ちた作品だと言えよう。夜だけの国という閉鎖的で神秘的な世界観。謎に満ち、そして秘密を持つ、夜森の住人たる少年少女たち。それらを描く端整な描線と、時に自然で時に奇抜な色遣いをした水彩の質感の絵。これらが合わさって描かれる夜森の住人たちの物語は明朗さと仄暗さをあわせ持っている。住人たちはそれぞれに個性的である。ソラニや夜森と行動を共にする、女の子に優しい「王子」、暴力的な看護師の「赤衣」、ガラクタ作りが趣味の「屑持」を始め、兄を亡くした少女、魔女を追う少女と相棒の犬、異形を見る目を持つ少年、勉学とバイトに忙しい苦学生と、いずれもひとクセ揃い。そんな彼/女たちの物語は、現在が相対的に明朗であるがゆえに、過去に負った心の傷が仄暗く、そして痛々しく響く。極めつけは夜森と対置される国と人物・「昼森」だろう。理想と現実が食い違う昼と夜、すなわち幸と不幸の二項対立を担う昼森は、心の傷と向かい合う夜森の国の住人たちの、そして帰還的に彼女自身の実存性を照らし出す。こうした〈ガンガン的想像力〉は、藤野もやむ、浅野りん、藤原ここあなどの作品が響く読者にきっと響くことだろう。

さて、本作は『まんがタイムきららミラク』連載作品である。私は同誌連載作である『純粋欲求系リビどる』の評において、ミラクを「アニメのような4コマ漫画の4コマ誌」であると述べ、『リビどる』を通じてその核を「巧みなカメラワーク」であると述べた。これは『Good night! Angel』『桜Trick』『リリィ』などの主たるミラク作品では確かに当てはまる。しかし、こと『ソラニ』となると、この表現は正確とは言い難い。なぜなら、本作は多分に「漫画的」だからである。「平面上に空間的に描かれる連続したコマを映画のように見せる」ための技法が、本作の至るところに用いられているからである。しかし、イラストレータが持つビジュアル技術を最大限に発揮するとともに、作品のストーリーを効果的に演出する、という目的は『リビどる』と変わらないと言えよう。ここにおいて、私はミラク評を「イラストレータが持つビジュアル技術が巧みな漫画技法により4コマ漫画として紙面に定着した4コマ誌」と更新したいと思う。

『夜森の国のソラニ(1)』p.5 右1-4コマ目

(図1:p.5 右1-4コマ目。クリックで大きな画像。)

このミラク評を踏まえて『ソラニ』の話に戻ろう。本作は漫画的な技法が多分に用いられてる。さらに、4コマ漫画として見れば、ふたコマ以上を図像的に連続させる、いわゆる「ぶち抜き」技法が随所で用いられている。ここで私が主張したいことは、このぶち抜きが作者のイラスト性を最大限に生かすために必然的に行われており、かつ、そこに見られる漫画的な技法から、作者はそれを意識的に行っている、ということである。その象徴的なものとして、ソラニが夜森について告げられる一本(図1)を見てみよう。ここではフキダシの空間的な配置による視線誘導と同一化、そして背景や人物といったオブジェクトを枠線上に配置したぶち抜きが行われている。1コマ目を読み始めた読者の視線は、初めは右側の破線円のあたりを泳ぐが、フキダシのセリフのために左上と誘導される。1コマ目のセリフを読み終えて2コマ目のフキダシに目が移る直線上には夜空の月が描かれ、同様に2コマ目と2・3コマ目間のフキダシ間を結ぶ直線上には森の木々が描かれている。これら「夜」と「森」の印象は、待ち受ける2・3コマ目間のフキダシの断片的なセリフ「ここは夜森」と即座に結び付けられ、実感を帯びて読者に伝わることだろう。そして、2・3コマ目間と3・4コマ目間のフキダシ間の直線上にはソラニの目が存在する。ここにおいて、読者はソラニと同一化する。かくして、3・4コマ目間と4コマ目のフキダシの断片的なセリフ「起きたくない人間が迷い込む」「夜の国だよ」は、先ほどの2・3コマ目間のセリフとともに、まるで詩のようなリズムでもって、まさに夜森に迷い込んだソラニとして物語に没入している状態の読者に届くのである。ここで、フキダシはもちろんのこと、森の木々やソラニ自身などもぶち抜きで描かれていることに注目してほしい。作者は元々イラストレータであり、コマ枠に抑えられることのない広がりを持つ、一瞬を切り取った神秘的な背景世界とキャラが魅力である。2~4コマ目からフキダシが除かれたものを想像すると分かりやすいだろう。しかし、イラストはそのままでは漫画たりえない。そこで、作者は自身のイラストに漫画技法を融合させることにより、その魅力を損なうことなく、漫画として紙面に定着させた。加えて、4コマ漫画という定型のルールを生かしてセリフの断片群を詩のように仕立てることにより、神秘的な世界観を効果的に演出しているのだ。これを必然的かつ意識的に行わずして、どう行うと言うのか!

『夜森の国のソラニ(1)』p.31 右1・2コマ目 『夜森の国のソラニ(1)』p.35 左3・4コマ目 『夜森の国のソラニ(1)』p.102 右3・4コマ目

(順に、図2:p.31 右1・2コマ目、図3:p.35 左3・4コマ目、図4:p.102 右3・4コマ目(左2コマは解説に不要のため黒塗り)。クリックで大きな画像。)

本作ではこの他にも様々なぶち抜きが見られる。いくつか引いてみよう。図2では図1と同様に視線誘導とぶち抜きが用いられている例である。図1では申し訳程度に残っていたぶち抜きコマ群の枠線すら図2では無くなっており、代わりにコマ間の右寄りの空間(木の枝の先端部分が描かれているあたり)がコマを分ける機能を果たしている点が興味深い。図3は枠線が明確に存在しながら、図像的には連続している例である。ただ無為に連続しているのではなく、各コマにアクセントとなるオブジェクト(星飾りおよびぬいぐるみ)が描かれており、総体として引き締まった2コマとなっていると言える。図4に至っては右2コマ目(紙面では4コマ目に相当)の枠が存在せず、コマ枠外の背景のように描かれている。手前の森は左の4コマの枠外にまで描かれ、奥の雲は(図にはないが)さらに紙面の左ページの枠外へと続いている。いずれもイラスト性と漫画性が高度に融合した例と言えるだろう。

『まんがタイムきららキャラット』2012年3月号 p.80 右1-4コマ目

(図5:『まんがタイムきららキャラット』2012年3月号 p.80 右1-4コマ目。クリックで大きな画像。)

4コマ目がコマ枠外の背景のように描かれている例をもうひとつ、単行本1巻には収録されていないが引いておこう(図5)。夜森の月を見上げる住人たち。3コマ目のソラニの視線は太い矢印のように左上を向いている。読者の視線はソラニの瞳を起点に、枠に重なるフキダシによって右下に誘導される。それと同時に、読者の視点はソラニのそれと同一化する。そして4コマ目の右下の位置から、ソラニがそうしているのと同じように、読者は左上に描かれた月を見上げることになるのだ! コマ枠が取り払われ、開放的に描かれる満月の美しさに、読者はソラニと同じように溜息が漏れることだろう。

p.53

(図6:p.53)

作者が漫画的技法を理解していることは、作品本編だけでなく、描き下ろしおまけページにもあらわれていると言える(図6)。おまけページでは1ページを縦長にふたつに分け、半分をイラストと文字によるキャラ紹介に、もう半分をそのキャラが登場する4コマに当てている。キャラ紹介と4コマの左右の入れ替わりこそあれ、他のキャラについても同様のページが用意されている。勘のいい読者なら、この様式は4コマ誌における各作品の扉ページでよく見られる様式に似ていると気づくだろう。あるいは、創作4コマ同人誌でよく見られる様式であると気づくだろう。(例えば、ちょうど筆者の手元にある《ずんだもち姉妹》(荒井チェリー・野々原ちき)のペットエッセイ漫画同人誌『だらだら歩き』でも、縦長半ページをペットの擬人化イラストに、もう半ページをエッセイ4コマに当てているようなページが多く見られる。)このページはまた、ある種の4コマ漫画におけるキャラの図像的な可変性を如実に示している。作者のイラストレータという出自を鑑みれば、このキャラはまずは左半ページのように細密に描かれることだろう。しかし、4コマの枠はこのキャラを細密に描くには小さすぎる。そこで右半ページのように、キャラの身体の一部分を切り取ったり、頭身を低くして、4コマの枠内に収めるのである。これはイラスト的な側面から見たら「4コマの枠はキャラを細密に描くには小さすぎる」と捉えられるかもしれない。しかし、4コマ漫画的な側面から見たら「細密なキャラを何らかの手段で枠内に収めることができれば、そのキャラは4コマ漫画による表現力という後押しを得ることができる」と捉える事ができるだろう。加えて、作者はぶち抜きという技法によって、キャラの図像的可変性の解像度を上げている――細密さをより広い範囲で自由に制御できる――のだ。ここにおいて、もはや作者は物理的な4コマの枠と言う制約に縛られない。その高いイラスト性を、巧みな漫画技法によって自由に、「4コマ漫画」という論理的な枠組みに落とし込むことができるのだから!

イラスト性と漫画性が高度に融合した、神秘的な世界観の4コマ漫画。本作も『リビどる』と同様に、4コマ表現の地平を切り開いたミラク作品のひとつだと言える。作品の世界観に共感した者、作者の〈ガンガン的想像力〉に心動かされた者、あるいはそのイラストに快楽性を見出した者はもちろんのこと、4コマ表現の「今」を追いかける全ての者はこの作品と向かい合うべきだろう。

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巧みなカメラワークによって実現した「アニメのような4コマ漫画」――眉毛『純粋欲求系リビどる(1)』

『まんがタイムきららミラク』という漫画雑誌がある。『まんがタイムきらら』の姉妹4コマ誌であり、2011年3月に創刊された。「作家たちは、ほぼ全員が漫画初挑戦!!」という大胆な創刊告知と「もっと、自由に4コマを。」という挑発的なキャッチフレーズには、それまでのきらら読者でさえ驚いたことだろう。

「純粋欲求系リビどる」は、そんなミラクに連載されている4コマ作品である。主人公・枕井リヒトはクラスメイトの美少女・井出川しずくちゃんに憧れる男子高校生。彼の目下の悩みは、毎晩悪夢を見ることと、悪夢の朝には身体に謎のアザができていること。そんなある日、彼のクラスに三人の美少女、レン、リク、ルコが転校してくる。放課後、リヒトが屋上で転校生たちの事を考えながら物思いに耽っていると、突然、彼の身体のアザから悪夢の中の化け物が現れ、彼を襲い始める。もうダメか、というところで彼を助けに現われたのは、キワドいユニフォームに身を包んだ三人の転校生。話を聞くに、彼女たちは人のリビドーを摂取して生きる存在であり、リビドーが強すぎるリヒトを守るためにやってきた、と言う――。あらすじだけ見ても、従前からの「ドキドキ☆ビジュアル」を体現した作品であることが分かる。そして、深く読んでいくと、そこにはこれまでにはない、ミラクらしい確かな新しさがあることが分かるだろう。この記事の続きではその新しさに迫っていきたい。

仲良し姉妹の微笑ましい日々,そして言葉と精神の成長――琴久花央『ひよぴよえにっき。(1)』

琴久花央『ひよぴよえにっき。(1)』

ちあきとはるは小学五年生と二歳の姉妹。ちあきは忙しいお母さんの代わりにはるのお世話をする立派なお姉ちゃん……なのだけど,自身もまだ幼いため,ちゃんとお母さんの代わりができているのか,時に戸惑う日々。そんなちあきの気持ちを知ってか知らずか,はるは自由奔放で好奇心旺盛で,ちあきはまたヒヤヒヤ。そんな姉妹の日常を描いた作品。芳文社『まんがタイムきららキャラット』連載。

仲良し姉妹の日々はとにかく微笑ましい。まだ物心がついていないはるの一挙手一投足はちあきの予想からことごとく外れ,子供らしい元気さと純真さを見せてくれる。お姉ちゃんらしくとはるを頑張ってお世話するちあきは,時にはるの行動が理解できず不安になるも,その度にお母さんやはるの言葉に励まされて元気を取り戻す,健気ないい子である。少女漫画的な絵柄と描線,そして背景に飛ぶ音符や花やハートは,二人の日々を時に楽しく,時に優しく彩っている。

そんな二人を読み解く上で読み逃せないのが,はるの赤ちゃん言葉である。今作では,はるの言葉は全て赤ちゃん言葉で読者に示されており,ちあきの耳にも間違いなくそのように聞こえている。自身を呼ぶときは「はる」ではなく「はゆ」,お母さんを真似た「愛してる」は「あいちてゆ」,そしてテレビ番組の「みんなといっしょ」はまだうまく言えずに「みなちょ」となる。そんなはるに,ちあきは時に和み,そして正しい言葉を伝える。それは「親」と「子」の自然なあり方かもしれない。しかし,この二人を見てこのようにも言えるだろう。言葉をうまく操れないことは幼さの証であり,言葉を巧みに操れることは大人としての――少なくとも幼くはないことの――証である,と。

言葉の習熟と精神の成熟,それは描き下ろしのちあきとはるの番外編によくあらわれている。体が入れ替わった二人を見れば,ちあきの体で赤ちゃん言葉を使う「はる」はその行動と相まって確かな幼さを見せ,それを諭すはるの体の「ちあき」は言葉を巧みに用いることでお姉ちゃんとしての頼もしさを見せている。また,幼くなってしまったちあきは「おはなちちにくいーっ!!」と,まさに言葉の不自由さを見せている。さらに,大きくなったはるは自らのことを「はゆ」と赤ちゃん言葉で呼ぶのではなく「はる」とハッキリ呼んでいる。

そして作者は,言葉をうまく操れない者が言葉を用いて自らの意志を伝える瞬間を描くことに意識的である。ここで作者の同人作品『CLOVER』に目を向けてみよう。この作品では,言葉を持たない猫耳少女が,スケッチブックに描いた草花の絵で少年と「会話」をする。三つ葉のクローバーに「ありがとう だいすき」の気持ちを乗せ,その先の草花に「その先の気持ち」を乗せて,少女は少年と通じ合う。少年が「その先の草花」を見つけた瞬間の少女の戸惑い,そしてスケッチブックから「その先の草花」の絵がこぼれ落ちた瞬間の少女の喜びにも似た表情は,草花という「言葉」を持ちながらも自らの気持ちを「言い出せな」かった二人が通じ合おうとする・通じ合う瞬間の表情として,非常に魅力的である。この作品が空白のカギ括弧「    」で締められている点からも,作者が言語的コミュニケーションに意識的であることが読み取れる。

琴久花央『ひよぴよえにっき。(1)』107ページ左1コマ目

その上で今作にひるがえり,はるがちあきの友達に対して,その友達曰く「ヤキモチ」を見せる回を見てみよう。この回では,はるは友達と仲良く話すちあきの隣で,その友達を見つめながら静かに戸惑い,ちあきの洋服を「きゅ…」と握る。その直後,はるはちあきに対してお遊びを要求する。はるの口からは「ヤキモチ」という言葉はもちろん,戸惑いを直接表すような言葉も出てこない。すなわち,はるはそのような言葉をまだ持たない程に幼い子供なのである。そして,そんなはるを見たちあきが「はるも成長したな」ではなく「はるの世界もどんどん広がっていくんだろうな」と,はるの現在ではなく未来,すなわち,これから大人になっていくはるを想うのもうなづけることである。はるは誰の目にも,そう,読者の目にも,まごう事無き幼い子供なのだから!

少女漫画的な感性で描かれる,仲良し姉妹の微笑ましい日々,そしてはるの言葉と精神の成長。いつか,はるが自らの言葉で自らの感情を表現する日――彼女が子供から大人になる日――を夢見て,この先も二人の日々を追いかけていこうと思う。

おとなり感想

どちらかというとあかんたれで、おっちょこちょい、ちょっと気弱だったりもするちーちゃんが、妹はるのために奮闘する。その様子はほのぼのとして微笑ましく、楽しく、面白く、時には笑えて、けれどその笑みは、ただおかしいからっていう感じではないんです。なんというんだろう。そう、頑張ってるね、いいお姉ちゃんだねって、そんな気持ちが自然とわいてきて、笑顔になってしまう。しみじみと嬉しくさせてくれるようなお話なんです。

こととねお試しBlog: ひよぴよえにっき。

「2歳児のピントの外れた応答、2歳児の世話をするには明らかに能力の足りていない10歳児の努力、能力不足から必然的に発生する失敗、失敗しても『お姉さんだから』繕おうとする虚勢」、ここら辺が一体となって不思議な感情がわくこと間違いないです。

庇護欲? 庇護欲なのか!? 庇護欲なのかーーーッ!!?(知らんよ

琴久花央「ひよぴよえにっき」 おまえらロリコンなら当然10冊ぐらいは買ったよな。 « おれせん?

フィードバックのある二人の関係があり、はるの一挙手一投足を見てちあきお姉ちゃんが何を思い何を感じるかを丁寧に描いているために、お留守番とお遊びの日々にささやかなドラマが生まれ、なんてことのない日常の光景でも飽きずに読ませてくれるんですな。

濃霧-gNorm- ひょうたん書店 準公式サイト: 親の目線で覗く仲良し姉妹の日常!これ読んで和まない人はいない! 1巻目の「ひよぴよえにっき。/琴久花央」

無垢・無邪気・仲良し、そうした要素の微笑ましさが全体にあふれる作品。この雰囲気は、「子供たち」への優しい視点から発せられているものではないかな~・・・という気がしますので、そんな感覚にハマれる人なら楽しめるかと思います。

五里霧中: ◆ 「お気に入り」 プチ感想63

幼なじみで許嫁な女の子と姉二人に囲まれた甘いドタバタラブコメ ― やまぶき綾『Sweet Home(1)』

「約束通りお嫁にきたよ」。朝,伊織くんが目を覚ますと,そこには見知らぬ女の子。すぐさま駆けつける伊織くんの二人の姉・葉澄(はすみ)と和奏(わかな)。話を聞くに,女の子は伊織くんの幼なじみで許嫁の陽向(ひなた)で,一家の父が彼女を預かることになったという。しかしこの陽向,男の子と体が触ると格闘的な意味でつい手がでちゃう子で――。かくして,ひとつ屋根の下,三人に囲まれた伊織くんのハーレム+若干流血ライフ,あるいはドタバタの嫁・小姑戦争が始まった,という感じの話。芳文社『まんがタイムきらら』連載。

ラブ甘好き男子諸君ならば読んで損はない一作。三人が三様に,そして牽制し合いながら,伊織に向けるラブが実に可愛らしい作品だ。陽向は伊織くんの幼なじみかつ許嫁として,二人の姉との仲も意識しながら,彼に一途で疑うことのないラブを向ける。その姿はまさにメインヒロインにふさわしい。上の姉・葉澄は父母が不在の一家をまとめるしっかり者で,学校でも生徒会長を務めるクールビューティーだが,実は隠れブラコン。伊織くんの見えない所で見せるデレからは,彼女の素直になれない姿が垣間見えてグッとくる。小さい姉・和奏は素直なブラコン。突然やってきたライバル・陽向を徹底的に牽制したり,陽向と仲良くする伊織にやきもちをやいたりと,独占欲を隠さないお子様な姿が可愛い。声が付くなら間違いなく釘宮だ。

引用:やまぶき綾『Sweet Home(1)』9ページ1・2コマ目

さらに言えば,この三人はキャラレベルだけではなく,描線レベルからして可愛いのだ。第一話の最初のシーンにそれがよく表れている。細く端正な線で描かれる,陽向の丸い瞳,胸の膨らみ,腰のくびれ,洋服のしわ,ふわりとなびく髪,そして背景に咲く花,その全てが読者にダイレクトに陽向の可愛さを伝えている。背景についてさらに言えば,今回のように花トーンだけでなく,ある時には星トーンで,またある時には水玉トーンで,それぞれの場面のキャラの喜びや驚きといった心情を感覚的に伝えている。こういった描線・技法の部分には少女漫画らしさを感じる。

今作においては前述した一人+三人だけでなく,陽向のクラスメイト・奈々も欠かすことはできない。彼女は伊織と陽向がひとつ屋根の下に暮らしている秘密を握るトラブルメーカーとして四人をかき回してくれる存在であり,あるいは読者の〈代弁者〉でもある。伊織と陽向の仲を茶化すのはあたりまえ。陽向のバレンタインには「私を食べて と迫る 陽向」と裸リボンな姿を妄想し,葉澄には「ムチが似合う才女」と女王様な姿を妄想する(そしてそのどちらの姿も作中で描かれている)。単行本カバー裏では和奏に旧スクを着せる始末。平穏を求める伊織くんとしては全くもって邪魔な存在だろうが,読者的には「いいぞもっとやれ」と応援したくなるキャラだ。

さて,ここで男性読者の立場から「もし奈々が男だったら(例えば,伊織くんの男友達だったら)」ということを想像してみよう。その「奈々」が総スカンを受けることは明らかだ。「なぜハーレムの中に別の男が紛れ込むのか!?」と。だから奈々が女であることには理由があるのだ。彼女は,伊織に移入する男性読者のために,読者になり代わって読者が求める三人の「女の子」を引き出す役目を担っているのだ(これが〈代弁者〉ということ)。この役目を伊織自身に担わせるのは難しいだろう。彼が誰かの「女の子」を引き出した時から,彼女のルートが始まってしまうのだから。もちろん,この先にはそういう日が来るかもしれない。しかし,少なくとも今現在で四人の〈日常〉を描く上では,伊織が三人のヒロインの誰かに偏ることは望ましくない。伊織自身でなく,かつ女であることが,奈々というキャラにおいて重要であり,これがドタバタで甘くてちょっとスケベなラブコメ劇を支えているのだ。

――

今作のレビューは一旦ここでお終いにして,以下では作者別作品にも触れてみたいと思う。ここで取り上げるのは「Honey×Honey×Honey」だ。今作は作者のきららデビュー作で,「Sweet Home」がきららで連載される前に数回読み切りで掲載されていた(当ブログでの掲載時レビュー)。内容はというと,プリンスな女の子が女の子らしい男の子に告白される,という女装少年ものだ。今作から描線レベルの可愛さは健在で,全く男の子に見えない男の子は読者の(主に私の)心をかき乱して止まなかった。

女装少年ブームの昨今,萌え系4コマ誌でも女装少年作品がいくつか見られる。最近の作品では,玉岡かがり「ダブルナイト」が「Honey×Honey×Honey」と同様の関係性の二人を描いている。サブキャラレベルでは高野うい「あにけん」にも女装少年キャラが登場する。また,これから単行本が発売される作品では,桜みさき「魔法少女☆皇れおん(仮)」が変身系女装少年を描いている(4コマ漫画ナツ10でのレビュー)。

今こうして「Sweet Home」が単行本になったのは,もちろん雑誌連載での支持があったからであろう。しかしそもそも「Honey×Honey×Honey」の時点で支持を得られないでいたら,今作は雑誌連載すら叶わなかったかもしれない。だから,私は,ひとりの雑誌読者として,そしてこの作品のファンとして,単行本が出たことが何よりも嬉しい。そして,欲張りな読者としては,誌面と作者のスケジュールが許す限り,女装少年ブームの流れに乗って「Honey×Honey×Honey」を復活させてくれることを願ってやまない。

――

最後にまとめを。キャラレベルと描線レベルの両方において女の子の可愛さを描く作者・やまぶき綾。今作「Sweet Home」では三人のヒロインによる嫁・小姑戦争を実にキュートに描くだけでなく,男子諸君が期待するお約束やシチュエーションもふんだんに取り入れて,楽しいドタバタラブコメに仕上げている。単行本で作者が気になった人は,是非雑誌で読んで欲しい。冬は風邪のお見舞い,2月はバレンタインデーでチョコ,夏はプールで水着といった話が,現実の季節感と合わせて読むことができ,単行本とはまた違った楽しみ方ができるだろう。

おとなり感想

主人公はもてもてで、けれどその好意に誠実に応えてしまうと優柔不断な男になってしまう。そういう心配がこの漫画にはないのです。誠実で、優しくて、けれど彼の心は定まっているといってよい。そのため、安心して伊織を見ることができるのかも知れません。

こととねお試しBlog: Sweet Home

あざといを通り越して、それなんてエロゲの粋を極めた設定がまず素晴らしいと思います。作画の可愛らしさも手伝って、キャラの魅力もきっちり前に押し出せていると思うし、許婚・陽向とちびっこの方の姉、和奏が主人公をめぐって「うー」と牽制しあって、クールで頼れる姉、葉澄がやれやれという感じで止めに入りながら、実は内心で自分も弟を甘やかしたくてたまらないと思ってる構図がちょっとたまらないものがあるなあ。

Sweet Home(1) ★★★☆ | 睦月堂工房

陽向のモフモフな感じと和奏のツンツンにも なかなかの魅力を覚えるこの作品だけど、 葉澄の、自分の気持ちを抑えてクールに装ってる姿や ぬいぐるみに囲まれてホクホクしてる姿など 色んな表情を見せてくれるところにはかなわない。

今までに購入した漫画、ゲームのメモ Sweet Home 1巻

中盤から出てくる女友達の奈々が、個人的にはいいキャラだと思いますw 陽向の親友として相談に付き合うけど、基本的には面白さ第一で行動し、伊織や和奏をからかったりニヤニヤしながら見守ったりする女の子。 彼女の暴走は止まることを知りません。でもしっかりオチもついてるから安心。(笑 こういうキャラは一人はいないとね。

青い留置線・改 Sweet Home(1)

他の漫画とは明らかに違う。何が? 良くわからんが、たぶんオーラが。リスとかハムスターみたいな小動物が醸し出すかわいいオーラが今この本の中に確かに写し取られている現実。特にカラーはやばすぎる。

やまぶき綾「Sweet Home」 - ねこもまぐれる日記

すごい あまい

おれせん。 ≫ [単行本] やまぶき綾 ≫ Sweet Home 「ボディが甘いぜ!!」 ※ガード不可

仙石寛子『背伸びして情熱』/まんがタイムKRコミックス エールシリーズ/芳文社

仙石寛子『背伸びして情熱』

この日をどれだけ待ち望んだことか。

作者の芳文社誌掲載作品をまとめた単行本。『コミックエール』からは男子生徒と女教師の恋模様を描いた表題作「背伸びして情熱」と,互いを好きになってしまった姉弟の苦悩を描いた「赤くない糸」を収録。『まんがホーム』からは2008年10月号掲載分までのオムニバス作品7編全てを収録。

本単行本および作者は,2009年の4コマ界で最大の収穫となろう。そう思えるほどに,作者の作品は強く痛く読者に響く。そしてその作品は,テーマにおいても表現においても,他のどんな作者の作品とも似ていない。続きで詳しく見ていこう。

松本ミトヒ。『メガミのカゴ(1)』/まんがタイムKRコミックス/芳文社

松本ミトヒ。『メガミのカゴ(1)』表紙

芳文社『まんがタイムきららフォワード』連載。舞台は女子校。メガネ・真面目・オールマイティとどう見ても委員長キャラの友人・明美が委員長をやっていないのはおかしいと嘆くオタク少女・南。じゃあ本当に委員長にしちゃおうと生徒会長を巻き込んで作っちゃいました「乙女の鏡委員会」。悩みを花カゴの中に打ち明ければ委員長の明美さんが解決してくれるよ!

南を始め友人たちとともに,毎回異なる依頼者の悩みを解決していく中で,明美のオールマイティさを見せてくれる。世話好きでスポーツ得意で演劇もクールにこなす明美(歌はダメだけど)は,確かに委員長の肩書きにふさわしいキャラ。

でも私はここで,この巻の読みどころは南にある,と主張したい。いやもちろん二人や周囲の友人あってこそのキャラたちであり話であり作品であるんだけど,この巻での南は他のどのキャラにもましてエキサイティング。

南は決して明美を場を茶化すだけの存在ではない。それを確信させてくれるのが演劇部のシンデレラのお話。134ページからクライマックスまでの7ページは神がかり。王子様の南がシンデレラの明美を見染めるこのシーンでの南のアドリブは,オタクな南でなければできないと思わせるだけでなく,普段の姿からは想像しがたい「やるときゃやる姿」を存分に見せてくれる。最高の形で読者を裏切ってくれちゃって。

現在の連載は舞台の女子校が共学になるという流れ。私なんかは素敵な男の子と彼女たちのお話なんかも読みたかったりします。

おとなり感想

南のキャラに触れている感想を。

女生徒達のお悩み解決の過程も、各人のしっかりしたキャラ立てと、南が囃して明美がきれいにまとめるという息のあったやりとりのお陰で、短い尺でもメリハリ効いたエピソードに仕上げられており、隙のない話作りであることだなあ、と。

松本ミトヒ。『メガミのカゴ』1巻 - 枳棘庵漫画文庫

委員長の宮本さんをイジる役目を、彼女に萌えを求めるオタク少女・南ちゃんが担当。二人の意識のギャップを楽しむというか、まったく噛み合ないんじゃないかと思われる二人のやりとりが面白いです。(少し、こなたとつかさのやりとりと共通した感じか?)

漫画まみれラノベづくし ニワトリが先か卵が先か。役職が先か雰囲気が先か。松本ミトヒ。『メガミのカゴ (BASKET OF GOODESS)』第1巻

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蕃納葱『教艦ASTRO(1)』

蕃納葱『教艦ASTRO(1)』

牧「あれ―― プリントどこしまったっけ」

烏丸「二段目の引き出し 手前のファイルボックス」

牧「あっ 本当だ」

南雲「……くわしいですね」

牧「すげー エスパーだ」

烏丸「副担ですもの バックアップはバッチリよ」

南雲「牧ちゃん ときどき後ろ注意した方がいいよ」

牧「後ろ?」

蕃納葱『教艦ASTRO(1)』 p.24

「先生」のイメージからかけ離れた破天荒な先生たちの日常。先生だって人間だもの。

蕃納葱「教艦ASTRO」は,芳文社『まんがタイムきららキャラット』連載の4コマ漫画。朝潮総合高校に勤める先生たちの日常を描いた作品。

「教艦」を冠する作品だけに先生たちが主役なわけだけど,この先生たちが只者ではない。まずは主要な先生を確認しよう。

牧 和泉
単行本表紙も務める,新任の女性保健体育教諭。男勝りでさばさばした性格。一人称も「オレ」。クラスの生徒の名前を覚えられない。
南雲 有子
新任の女性国語教諭。学校ではなぜかいつも和服。見た目に似合わず大食漢。隠れ腐女子。
烏丸 かなめ
女性外国語教諭。新任の牧先生にアブナイ視線を向ける。
荒井 準名
血に飢える養護教諭。保健室の主。サボリ魔でゲーム好き。非常勤講師を勤める牧の兄とは恋人同士。

さて,既にこの時点で,普通の作品に登場する先生たちが持つ真面目やストイックというイメージから,この先生たちはちょっとかけ離れていることが分かる。

そしてこの作品,先生と生徒の触れ合いはほとんど全く描かれない。職員室,仕事後の居酒屋,修学旅行の先生部屋など,描かれるのは先生の密室,そして普段は生徒に見せることのない先生の素顔。

そこでの彼/女らは特別でもないただの大人だ。にもかかわらず,その言動が常識外れでおかしく見えるのは,先ほど述べた「先生」に対するイメージがあるからだろう。ある意味,主題が「先生」に決まった時点で,この作品は勝ちだったのかもしれない。

そして常識外れと言っても,どこか人間味もあるところが憎めない。酒に酔いつぶれたり,校内で迫り迫られたり,メガネ男性教師に腐った妄想をしたり。単行本帯にもあるように,先生だって人間だもの。そこには不思議な安心感さえ漂う。

きらら作品らしく,ちょいエロさも忘れない。帯の煽りにある うら若き女教師たちが官能を刺激する も,ある意味間違いではないだろう。事実,牧先生は健康的にエロい。ただし,先生と生徒,というシチュエーションは存在しないのでご注意を。

大和狸『オオカミの手かします!(1)』

大和狸『オオカミの手かします!(1)』

小春(あ 子犬だ かわいそう… お腹すいてるのかな)

(小春,子犬にパンを与える)

小春(…マンガとかだと人間に変身とかするんだろうな…)

ハチ(子犬)「ありがとうございます!」

小春「なーんて え?」

ハチ「危うく飢えて死ぬところでした!」

小春(本当になった!?)

大和狸『オオカミの手かします!(1)』 p.9

ベーシックにキャラたちのドタバタを描く。そして犬耳。個人的にはかなりの拾い物。

大和狸「オオカミの手かします!」は,芳文社『まんがタイムきららMAX』連載の4コマ漫画。人間と友達になりたくて,妖怪の里を離れて街にやってきた狼の妖怪の女の子・ハチ。お腹が空いていたところに助けられた女の子・小春と友達になり,小春は帰る場所がないハチを自分の家に招き入れる。こうして小春とハチの日常が始まった,という話。

表情がうまい。ドジだけど頑張りやなハチの喜怒哀楽が,漫画的な表情でコロコロと変化して描かれる様が楽しい。ギャグは淡々としたツッコミが基軸。シンプルに肩張らずに読めるところが嬉しい。ギャグ漫画としてすごくベーシックなところにある作品だと思う。

これが基本となって,小春とハチの絡みがメイン描かれ,そこに個性的なサブキャラとのやりとりが入る。ハチに可愛い服を着せるのが好きな小春の母,コワモテ顔なのに少女漫画家の小春の父,ハチのことが好きな友達の妖狐・イナリなどなど。みんなのおかげでかき回される彼女たちのドタバタな日々が面白く,それでいて彼女たちの中で閉じた世界が妙に心地良い。たまに描かれるハチの物憂げな表情とコスプレ姿はサービス精神の現れ。

多分に犬耳バイアス(狼なのに!)がかかっている気がしなくもないわけだけど,個人的には本作は『まんがタイムきららMAX』における拾い物だと思う。今後の連載にも期待。

カバー裏にはおまけ漫画あり。イナリの姿が可愛い。

一智啓『ももえん。(1)』/まんがタイムKRコミックス/芳文社

一智啓『ももえん。』1巻

ひょんな事から女子高に入学することになったオレ 野沢由貴(15)

悠木「もー いつまで鏡見てんの?学校いくよっ」

由貴「…今年から共学のハズなのに なんで男子の制服がないんだろう…」

悠木「面白いからじゃない?」

一智啓『ももえん。(1)』 p.10

倒錯の桃園へようこそ。

一智啓「ももえん。」は,芳文社『まんがタイムきららMAX』にて連載中の4コマ漫画。ひょんな事から,姉・悠木と同じ高校に女装をして通うことになってしまった少年・野沢由貴。しかし彼が美少年であるがゆえにその事実には気づかれず。彼の友達で同じく美少年の蓮,どう見てもゴリラにしか見えないのに,たまに超絶の美少女に変身する男の子・真(通称まこちん)と共に,ハーレムだけどヒヤヒヤの日常を送るという話。

設定の時点で既にぶっ飛んでるわけだけど,話はさらに奥が(いや,業が?)深い。通学路の交差点で出会い頭にぶつかった先輩の女生徒に恋する由貴くん,そして下級生の女の子からなぜか好かれる由貴くん。元々の性で見れば普通の恋のはずなのに,姿は両方とも女の子。これは百合なのか?違うのか?いずれにせよイケナイ雰囲気が漂っている。

ここにさらに「ひょっとして由貴くんて可愛いんじゃないか……?」と思った暁にはもう訳が分からない。倒錯しているのは由貴くんを始めとする登場人物じゃなくて自分?でも本当可愛いんです。抗えないんです。……はっ!俺は今何を!

そんなこんなでドタバタ展開が繰り広げられるんだけど,実はこの作品,何の説明も無しにシーンが飛ぶことが多くて,微妙に読みにくい。じゃあ作者は構成が下手なのかというとそういう風にも感じなくて,むしろこれって作者の女性的感性なんじゃないかなあとも思う。女三人集まってハイテンションでおしゃべりする姿を傍目で眺めているあの感覚。ああ,これって,カザマアヤミ「ちょこっとヒメ」の時にも感じたような。

ともあれ,こんな感覚を感知しやすいアンテナを持っちゃってる自分としては,この作品はとても心地いい。今後の連載にも期待。あと,誰かがジェンダーの観点から深く語ってくれることを切実に希望。

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石見翔子『スズナリ!』1巻

石見翔子『スズナリ!』1巻

猫耳と百合。姉妹のスキンシップが微笑ましく,時にエロティック。

石見翔子(いわみしょうこ)「スズナリ!」は,芳文社『まんがタイムきららMAX』にて連載中の4コマ漫画。普通の女子高生・高村楓(表紙左)。ある日彼女が目を覚ますと,目の前に自分と瓜二つの猫耳少女がいた。鈴(表紙右)と名乗る彼女は,なしくずし的に楓の妹ということになり,高村家の一員となる。そして鈴は楓と一緒の学校に通いだす。

話は基本的に楓と鈴の日常。楓にべったりな鈴と,そんな鈴に振り回され,少し疎ましく思いつつも,本当は大切に思っている楓。この二人の姿が何とも微笑ましい。そして,楓に対してちょっと過剰なスキンシップを求める鈴の姿がほのかにエロティックでもある。単行本カバー裏では,鈴が楓にほっぺチューをするなど,素晴らしいほどの百合分が含まれている。

周囲のキャラも個性的で楽しい。楓の父母は夫婦ラブラブで,それを見た鈴が真似をして楓に対して同じ事をする。まさにこの親にしてこの子あり(実際には子じゃないけど)。アグレッシブなクラス担任,萌えにこだわるクラス委員長の男子生徒,時々何かが降りてくるクラスメイトの女子生徒は,2人の学校生活を痛快にかき回していく。

その一方で,作中では楓と鈴の過去が時々見え隠れする。雨の中傘をさす少女,濡れたダンボール箱,そして神と思しき存在。どうやらこの2人(1人と1匹?)には悲しい過去があるようだけど,それは今後も少しずつ描かれていくのだろう。幸せな結末を願わずにはいられない。今後の連載も楽しみ。

とらのあなでは単行本購入特典として小冊子『スズナリ! mini』を配布中。ゲスト執筆陣の寄稿の他,石見氏描き下ろしの「スズナリ! 1.5話」を収録。ゲスト執筆陣は阿部川キネコ,荒井チェリー,一智啓,白雪しおん,すか,鈴城芹,ナントカ,未影(掲載順,敬称略)。

とらのあなではまた,『スズナリ!』1巻を含む9月27日発売のKRコミックス,および現在発売中の『まんがタイムきららキャラット』2006年11月号の購入者にイラストカードを配布中。この『キャラット』11月号には「スズナリ!」がゲスト掲載。単行本で石見氏を知った方は,こちらも読まれてみてはいかがだろうか。

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