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個々の食材の擬人化とその組み合わせが絶妙な食卓コメディ――池尻エリクソン『田中さんちの白米ちゃん(1)』

池尻エリクソン『田中さんちの白米ちゃん(1)』

「わたすは秋田の白米です 今日もおいしくたけますた」――。料理好きのサラリーマン・田中さんに買われたあきたこまちの白米ちゃんと、その友達のみそ汁ちゃんを中心とした食卓擬人化4コマ。竹書房『まんがくらぶ』『まんがライフ』連載。

本作の擬人化は上手い。実に上手い。これは何度言っても言いすぎることはない。まず、元の食材が一目で分かるシンプルな外見で対象の食材を描き、その言動には食材の特性を見事に反映させている点が上手い。白米ちゃんを例に挙げてみよう。外見は蓑を被りもんぺを着た田舎娘。東北の農家をイメージさせる姿である。彼女が炊飯釜の中で研がれる姿は滝修行のごとし。外出するときは田中さんの頬にくっついて。チャーハンとして炊かれればパラパラを踊り、固めに炊かれれば眼鏡をかけた真面目な姿になる。さらに、田中さんラブのみそ汁ちゃんも見てみよう。外見は緑の帯(=ネギ色)に茶色(=味噌色)の着物少女。田中さんへの愛の言葉は湯気で伝える。結婚指輪は輪切りの万能ネギ。バレンタインの贈り物はハート型に固めた味噌だが、「溶きが甘かった」と田中さんに溶かされてしまう。それぞれ、白米と味噌汁の特性が現れている擬人化と言えよう。

登場する食材は、白米ちゃんとみそ汁ちゃんに限らず、バラエティーに富んでいる。雅なる米・魚沼産コシヒカリ。白米ちゃんの姉にして酒飲み・おミキ(=神酒)さん。豆顔(形状的な意味)でネットリ無表情の納豆さん。中身のない男・ピーマンさん。温室育ちの赤髪トマト姉妹(妹はプチトマト)。開放的というか露出癖のあるアジさん。ギターのスター・リンゴさん。ちぢれロングヘアーの中華娘・ラーメンさん。頭のみかんが実はタンコブ(餅つき的な意味)なお餅さん。白髪アフロのわたあめさん――。日常性と季節性を重視する4コマ誌において、日常的な食卓から季節のイベントまで幅広くカバーしていることが分かる。これだけ多くの擬人化キャラを生み出す作者の発想力には平伏せざるを得ない。また、いずれの食材の描写も(ネバネバ系食材という例外はあるが)食べられるという立場にありながらグロテスクな描写はほとんど一切なく、ギャグ漫画としてのコミカルさを大切にしていることが伺える。

そして――ここからが本題だが――本作の擬人化の上手さは、これら個々の食材の描写のみにとどまらず、その組み合わせによるコメディにまで及んでいる。単行本1巻であれば夏祭りの話が最たるものだろう。油揚げの浴衣を身にまとい、田中さんの頬にくっついて夏祭りにやってきた白米ちゃん。ふとしたことから田中さんとはぐれてしまった白米ちゃんは、夏祭りの食べ物たちに助けられて田中さんを探す。ソースせんべいさんは似顔絵を書く。わたあめさんは夏祭り参加者の手にしたわたあめの人脈(?)を使って田中さんの居所を突き止める。そしてかき氷さんは台パチンコを使って白米ちゃんを田中さんの頬に飛ばすアイデアを思いつき、自ら氷のジャンプ台になる。発射間際にかき氷さんは白米ちゃんに言う。「氷はいつか溶けるもんさ/…でもな/友達をアイスる気持ちは溶けやしない――」。言葉遊びも加えたこのコメディには、個々の食材の擬人化の上手さ、そしてその組み合わせの上手さがよくあらわれている。

単行本1巻には収録されていないが、私が最も好きな一話が海賊(かいぞく)の烏賊(イカ)の一話だ(『まんがくらぶ』2011年5月号収録)。この話では、まず漢字、次いで「海賊王」と「大王イカ」による言葉遊びで始まり、そこに光に集まるというイカの習性により光り物が好きな海賊という〈理〉を与え、さらにあぶり出しの宝の地図からあぶられて丸まるスルメの習性を接続している。言葉遊びという一見して安直な発想から始まっているように見えるこの一話は、しかし話が進むにつれて食材の要素が「安直な発想」を確固たる理由づけでもって後ろ支えしていく。そして、最後の一本が終わったときにはコメディとして成立してしまっているのだ。そのコメディの過程は「ここでその要素を持ってくるか!」という驚きの連続である。

作者は擬人化の世界を大切にしている。それは、これまで述べてきたような明らかな擬人化はもちろんのこと、それを影ながら支える技法にも現れている。少し注意して読むと分かるが、本作に登場する人間キャラは目が描かれていない別記事でも似たようなことを書いたが、人間の目の排除はふたつの世界の切り分けを可能にする。すなわち、擬人化された食材たちが描かれるコマに人間の目を描かないことによって、人間の世界と食材の世界を明確に分けることができる。作品で描かれる白米ちゃんの姿は田中さんには見えていないのだ。これが、ファンタジーが許容されにくいファミリー4コマ誌において、しかし本質的にファンタジー要素を含む擬人化を、いわば「食材の国のおとぎ話」として成立させている要因と言えよう。

本作は擬人化とファミリー4コマ誌を論じる上でも重要な作品と言える。多彩な擬人化キャラたちによる日常性と季節性のカバーと、人間の目の排除という擬人化技法による「食材の国のおとぎ話」としての成立――。ファミリー4コマ誌における擬人化的想像力は「動物のおしゃべり」や「東京!」などの作品に既に見られる。しかし、こと「ファミリー4コマ誌との親和性」という観点においては、本作は既存作品に引けを取らないか、あるいはそれ以上の作品であると言っても言い過ぎではないだろう。このような作品が、そもそもファミリー4コマ誌からではなく、ウェブコミック「livedoor デイリー4コマ」から登場したことは実に興味深い。この新たな感性に、今後も注目していくべきだろう。

個々の食材の擬人化とその組み合わせが絶妙な食卓コメディ。擬人化好きのみならず、広く万人に読んで欲しい作品である。

おとなり感想

万人に通じる、そんなマスコット的な可愛さがあって、子供が見ても喜びそう。内容もシンプルだし、するするとスムーズに読めて、そんなところに気の利いたネタが投入されるものだから、くすりと笑ってしまうんですね。しかし、納豆の威力がすごい。あの絵柄の強烈さでもって、どんな状態からでもオチに持ち込める、そんなキャラクター。白米、みそ汁はじめ、他のキャラクターは可愛かったりするのに、納豆だけなぜこんなに!? と思うくらいの扱いで、でも納豆の特徴というかはよく表現されてるようにも思うのですね。

こととねお試しBlog: 田中さんちの白米ちゃん

田中さんに美味しくいただかれるのが大好きな、素朴で可愛いごはんちゃんとみそ汁ちゃんが、嬉しくって大はしゃぎしたり、田中さんのためにしでかしたりしたことが意思疎通の出来ない田中さんをびっくりさせたり不幸を呼び寄せたりしてしまうことになったり、逆に田中さんは大好きだけどごはんちゃんは大のニガテとする納豆(ナゼか全身ぬるぬるの無表情な男達の集団で描かれる(;´▽`A``)を載せられて「えええーーっ!?Σ(T□T)」ってなったりする、食べ物たちと田中さんの間のディスコミュニケーションからくる空回りだったりすれ違いだったり、人間の視点と田中さんを見上げるごはんちゃんたちの世界とのギャップが面白いんです。

田中さんちの白米ちゃん:Comic Twitter !

この4コマでは時々食材目線からのメッセージが織り込まれています。「これだけのために出費した甲斐があった」と思えるぐらいオレのお気に入りの一文があります。「あなたの「おいしい」が聞きたくて、わたすたちはがんばっています。煮たり焼いたり蒸されたりご飯になるのも大変だども、明日もおいしくしてください。わたすたすが「ごちそうさま」を聞かないように」

つらつら雑記帳 【コミックス感想話】ごちそうさまといえる幸せ【田中さんちの白米ちゃん編】

「お米の1粒1粒に感謝しながら残さず食べなさい」その1粒1粒に神様がいる・・・といったようなことを聞かされて、子供時代を過ごされた方もおられるやもしれません。そこには汎神論的な考え方とでもいうのでしょうか、日本的な情緒を感じてしまうのですが、こうした情感を具現化したものこそが、この白米ちゃんたち擬人化された食材たち・・・なのかもしれません。(ゆえに人には視えない)

五里霧中: ◆ 『田中さんちの白米ちゃん』1巻 これは4コマ漫画における”食材”の宝石箱やー!!

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ひとクセあるお嬢様たちとのハチャメチャな日常――みなづき忍『ひみつの花園(1)』

みなづき忍『ひみつの花園(1)』

三園青葉くん(小五)は、両親が海外出張の間、姉・紅葉が住み込みで働くお嬢様学校の女子寮に住むことになる。そこで待っていたのは優雅な生活、あるいはお嬢様たちとのドキドキな生活……ではなく、お嬢様に対する夢を壊す「お嬢様」たちとの生活だった――。竹書房『まんがライフオリジナル』連載。

それぞれに個性的な「お嬢様」たちが面白可笑しい作品。ズボラでマイペースな紅葉、忍者のような万能SPがついている撫子、ボーイッシュでハイテンションな杏、高飛車でダイエット意識の高い菜々花、ミステリアスなジト目メガネの桜。彼女たちは個々にひとクセを持っており、また、若い女子パワーでもって自身の生活を謳歌する。そのハチャメチャぶりはコミカルで楽しい。分かりやすいのが通販のエピソードだろうか(「通販」という話自体も実に女子らしい)。使いもしないダイエットグッズを買う菜々花や、仕事の逃避に我慢できずにゲームを買う紅葉など、買ったものや買い方にそれぞれのキャラがよくあらわれているエピソードだ。

作者作品の魅力は、このブレないひとクセを持った女子にある。彼女たちはいわゆる「普通」から常にズレている。彼女たちはそのズレを自覚することはあっても、決してズレを直そうとはしない。作者の別作品「総天然色乙女組」に目を向ければ、天真爛漫、王子様、霊感(?)持ちのかしまし三人組が、それぞれのキャラに基づいたいかにもズレた言動を互いに指摘し合っている。ズレた言動は可笑しみを生み、その可笑しみはブレないキャラに支えられて絶えず続いていく。まさに〈日常〉を描くためのキャラづけとして最適化されていると言えるだろう。

(付け加えるなら、作者の女子キャラの「ひとクセ」の中でも、天真爛漫さは特筆すべきだろう。「総天然色乙女組」の朱音、「先生のたまご」のたまこ、「太陽くんの受難」の太陽妹がこれに相当する。悪意を無力化し、常識人を圧倒し、それでいてその幸せそうな姿に周囲が巻き込まれていく天真爛漫キャラは、作者作品における最大の武器である。しかし、本作ではこのキャラにピッタリ相当する女子は登場しない(一番近いのは杏だろうが)ため、言及はこの程度に抑えておく。)

そしてこの作品では、男子たる青葉にも言及せねばならない。極端な話、この作品は彼が不在でも成立しうる。なぜなら、彼からお嬢様たちに対する積極的な言動は、本作では見られないからだ。「総天然色乙女組」のように、あるいは単行本収録の番外編「シークレットガーデン」のように、女子だけでもこの作品は回せうるのだ。では、青葉は何のために存在しているのか。彼は女子たちのキャラを際立たせるために存在しているのだ。主人公(!)としてお嬢様の面々と暮らす彼はまた、常識人あるいは苦労人として彼女たちのパワーと仕打ちを一手に引き受け(突然の買い物につきあわされ、海水浴では荷物を持たされ、学校の視察の際には女装させられる)、それらにツッコミ続ける。青葉が、女子たちのパワーについていけない存在(=男子)として、また、女子たちの言動を一歩引いて観察する存在(=常識人)としてあるがゆえに、女子たちのキャラが引き立ち、作者作品の魅力がより引き出されているのだ。

青葉の存在は、掲載誌がライオリというファミリー誌であることにもよるだろう。いわゆる萌え系の雑誌であれば、青葉が不在でも、その種のリテラシを持った読者によってこの作品は受け入れられうるだろう。しかしファミリー誌の読者にそのようなリテラシは期待できない。そのため、青葉という常識人を読者の感情移入の対象として作品に登場させた。それが結果として作者作品の魅力をより引き出すことにつながっていることは、実に興味深い事実である。

ひとクセあるお嬢様たちとのハチャメチャな日常。作者は6月7日にも単行本『先生のたまご』(芳文社『まんがタイムオリジナル』連載作品)が刊行される。こちらはひとクセある先生たちの日常を描いた作品であり、作者作品の最大の魅力である天真爛漫な女性キャラがよくあらわれている作品である。作者に興味を持った方は、「ひみつの花園」ともども、手に取って欲しい作品である。

おとなり感想

”小学生の男の子”が”高校生のお嬢様方”に色々と振り回されるという感じが非常に上手く、面白く描かれている作品です。 絵柄もすっきりしていて読みやすいので、恐らく、多くの方に受ける作品であると思います。 お薦めです。

『ひみつの花園 1巻』の感想|まんが栄養素

世間知らずの天然お嬢様におバカな元気娘、乙女の秘密を教えてくれる子に、その存在自体が秘密たっぷりな子、多様な寮生に囲まれながらの生活は楽しいことだらけ、驚くことだらけ。変わり者だらけとはいえ皆それなりのお嬢様だから、やることなすこと豪快だし、特に、実家ネタがとても優雅。お嬢様キャラのいるコメディ作品ではここまでこの手のネタ連発はできないだろう。

今までに購入した漫画、ゲームのメモ ひみつの花園 1巻

お嬢様学校ですが、お嬢様あり、おてんばあり、天然あり、ロリありとバラエティ豊富です。まさにギャルゲーなんですよね。最初はこの境遇を嘆いていた主人公も、次第に慣れてきました。家庭訪問などもこなして、今ではすっかりなじんでいます。まぁ、体のいいオモチャなんですけどね。

よんこまたん(4コマ譚) ハーレムなんだけど「ひみつの花園」みなづき忍

いつまでも続くような恋人関係の楽しさと安心感――来瀬ナオ『はるかぜ日和(1)』

来瀬ナオ『はるかぜ日和(1)』

元気中学生・村上太郎くん。この度めでたく、クラスメイトの森下吏南(りな)が彼女になりました。吏南はちょっとクールで素っ気無いところもあるけれど、太郎くんはそんなのお構いなく、吏南のことが元気に無邪気に大好きで。吏南は吏南でクールな裏側でちょっと恥ずかしがり屋だけど、元気な村上くんのことが好きで。そんな二人の日常を4コマ漫画と1ページ漫画で描いた作品。竹書房のWebコミック『まんがライフWIN』連載。

恋人同士だけど態度に温度差がある二人の様が楽しい作品である。なりたてホヤホヤの恋人とは思えないほど、太郎くんは吏南に対して賑やかに積極的だ。吏南に対する愛でもって猪突猛進し、オーバーなアクションで愛を表現する彼の姿には、若々しさと青さが感じられて実に可笑しい。他方、彼を受け止める吏南は恋人とは思えないほどクールに落ち着き払っている。それが彼との温度差を感じさせてくれてこれまた可笑しい。さらに、冷静な男友達・曽根崎くんと天真爛漫な女友達・笹山さんが、凸凹な二人に凹凸とぴったりマッチして、二人の楽しき日々を後押ししている。

そして、温度差はあるが、二人の恋人関係が揺れることなく続いていく様に安心する作品でもある。太郎くんは吏南がクールであることにも全く不安を抱かず、しかし彼女のさりげない愛をちゃんと受け止めている。吏南は太郎くんの元気な愛を時にそのクールさでスルーすることはあっても、決して無下にすることはなく、その元気さを感じ取って喜びとしている。不和もなく、ケンカもなく、友達という良き理解者にも支えられ、二人は仲良き恋人同士としての日々を紡いでいく。唯一、バレンタインデーのエピソードで太郎くんが吏南に対して誤解する場面があるが、その誤解もわずか次のページであっさりと解かれている。

そんな楽しさと安心感がいつまでも続いていくように感じられるのが、今作の最大の魅力だろう。楽しき日々の結果は二人の仲の良さとして刻まれる。その仲の良さに支えられて、次の楽しき日々が生まれる。両者がスパイラル的に働くことで、現在はもちろん、将来に渡っても、二人がいつまでも楽しく仲良き恋人同士でありつづけてくれることを感じさせてくれる。そこに「恋の儚さ」は全く感じられない。太郎くんの言葉を借りれば、「幹みたいにずっと」あり続ける恋がそこにあるのだ。

さて、作者の作品を評する上で欠かせない人物がいる。作者の姉であり、また作者同様に漫画家であるカザマアヤミだ。両者が姉妹であることは、カザマ作品の単行本あとがきにおける「妹」の姿(『ちょこっとヒメ(6)』が分かりやすい)と、この単行本の作者コメントに描かれている作者自画像を比較していただければ一目瞭然だろう。そして、両者の作品を比較すれば分かるように、絵のタッチはとても似ている。また、キャラのノリ、特にハイテンションなノリについても通じるところがある。

両者の作品にいくつかの共通点が見られるのは事実である。しかし、少なくとも男女恋愛もの、あるいはそれに準するものに関しては、両者の作品には決定的な違いが一点存在する。カザマ作品では、男女は恋人同士とはまだ呼べない状態から始まり、その仲を揺らがせなながら恋人という関係に向かっていく。それに対して作者作品では、男女の安定した関係が前提として与えられているのだ。今作では太郎くんと吏南が恋人になったところから物語が始まっている。そして、その関係は他者によっても、また二人自身によっても、作中で決して揺らぐことはない。

男女の安定した関係を作品の前提とすることで、二人のあらゆる言動は報われる。全ての言葉と全ての行動が、二人の幸せな日々の証として刻まれる。そこには相手や自分に対する不信や不安、あるいは二人の関係の崩壊といった悲劇は一切存在せず、また、将来におけるその存在の可能性を感じさせない。そのことがたまらなく心地よく、そして安心するのだ。この点は〈日常〉を描く4コマ漫画という観点から見ても親和性が非常に高い。

今作に限らず、作者の男女もの作品については同じことが言える。同人作品を挙げれば、幼なじみ同士の夏休みを描いた『眩夏モラトリアム』でも、クラスメイト同士のクリスマスの夜を描いた『ホーリィウォーキング』でも、そこにある男女の仲は決して揺らぐことはない。控えめに言っても、崩れることはない。そもそも今作も、元々は作者の同タイトルの同人作品である。ここから、作者自身がいかに安定した男女関係に指向しているかが分かるだろう。そして『はるかぜ日和』は、そんな作者作品の本質を楽しむ上で、またとない作品のひとつであるのだ。

いつまでも続くような恋人関係の楽しさと安心感。元気男子とクール女子の幸せな恋模様。今後も引き続き、二人の日々を追いかけていきたいと思う。

おとなり感想

周囲の視線を全く気にすることもなく、また衒いも恥じらいもなく、吏南大好き! でパタパタと近寄っていく村上君と、喜怒哀楽があんまり表に出ないクールな吏南さん。

性格は全然違う「動」と「静」のこの二人、お互いに補い合っていて実にお似合い。

棘叢庵漫録 初心い恋、微笑ましい恋愛。『はるかぜ日和』1巻

安定感と変動感は来瀬ナオのラブコメで同居する。つまりエロゲーに喩えるならばバッドエンドをけっして迎えることのないFD収録のアフターを前提としておきながら、当人たちにはルート分岐前のういういしくってこちらが声をあげて応援してあげたくなるような恋愛をさせる、という非常に画期的なパターンですねこれは?(バシーン、という音を鳴らして机を叩く)

コーラはおやつに入りません

山野りんりん『ちこりん日記(1)』

山野りんりん『ちこりん日記(1)』

○月□日

今日は水泳でした。

せりかちゃんがナイスバデーでよかったです。

夜 お兄ちゃんがパトカーに乗って帰って来ました。

すごいな、お兄ちゃん。

明日もよい日でありますように…♥

山野りんりん『ちこりん日記(1)』 p.28 「ちこりん日記」

予定調和に向かう過程を安心して楽しめる作品。

山野りんりん「ちこりん日記」は,竹書房『まんがくらぶ』連載の4コマ漫画。成績優秀ながらマイペースで天然な中学生の女の子・ちこりと,そんな妹を溺愛する大学生の変態兄・セイジの日常を描いた作品。

何事にも動じないちこりを中心に,家族やクラスメイトなど周囲の人間がドタバタを繰り広げる。特に兄・セイジは,その妹溺愛ぶりが元で,毎回不審者扱いされて警察のお世話になる。その姿は作中のキャラの中でも最も滑稽であり,ちこりの天然さと並んで,作品のおかしさの主軸のひとつである。

各話の最後は,寝る前のちこりの日記シーンで締められる。普通の人とずれた感性の文章と,書き終えた後にありえない寝相で寝る姿がまた笑いを誘う。

この警察と日記は,各話にほぼ必ず盛り込まれている。一見ワンパターンに見えるが,実際に読んでみるとこれが心地いい。今回のセイジはどんな風に警察のお世話になるんだろう,今回のちこりはどんな日記を書くんだろう――。そんな予定調和の結末に向かう過程を安心して楽しめる作品だと言っていいだろう。

私屋カヲル『ちびとぼく』8巻

私屋カヲル『ちびとぼく』8巻

ばるたん「ギニャ~~♥」

こんな日が ずっと続くと思っていた……

私屋カヲル『ちびとぼく』8巻 p.12「幸せな日々」

郵貯の男とばるたんの明日は。

私屋カヲル「ちびとぼく」は,竹書房『まんがライフオリジナル』にて連載中の4コマ漫画。猫好きの男の子・ケンヂくんと,彼に溺愛される猫・ちび,および彼らの周囲の猫好きな人々の日常を描いた作品。

8巻は,まず表紙が面白い。このちびにセリフをつけるなら「うーん,ほどよい塩味」といったところかな。え,食べちゃうんですか?

8巻の主役は,真面目公務員(もう公務員じゃないかな?)・郵貯の男と,彼の飼い猫で元は捨て猫のサーバルキャット・ばるたん。ばるたんと幸せな日々を暮らしていた郵貯の男は,ある日,ペットショップのサーバルキャットの値札を目にする。そこには彼の給料の何倍もの値段が。それを期に,元の飼い主のこと,そしてばるたんとの別れが頭の中に浮かぶ郵貯の男。さらにサーバルキャットが規制動物ということも知り,揺れる郵貯の男。彼らに安寧の日々は訪れるのか……。実は連載のほうでは,この一人と一匹の結末は既に明らかになっているのだが,それは次の単行本に期待することにしよう。

この他,8巻には「実録ちびとぼく」やゲスト寄稿も収録。ゲストは犬上すくね氏と後藤羽矢子氏。ともに猫擬人化。最近は猫擬人化が流行ですか?犬上氏の描く,ヤクザのアニキと仔猫ちゃんの絡みはなんともエロティック。また,単行本プレゼントにはちびとぼく4コマバスタオル。絵柄が気になるので応募する。

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『ちびとぼく』7巻は買ったけど感想は未筆。

みずしな孝之『けものとチャット』2巻

みずしな孝之『けものとチャット』2巻

会長「ねえねえ!このDVDのニャンちゃん達はなんて言ってるの?」

猫1「いやー よくこんなもんに6800円も払うよなー」

猫2「ゴロゴロしてるだけでボロ儲けか!」

猫3「ったくチョロいよなー ネコ好きな奴は」

会長「あなた個人の感想じゃなくって!!」

茶々「こいつらが言ってるんだっつーの!!」

みずしな孝之『けものとチャット』2巻 p.67「副音声」

猫に幻想を抱く会長。そんな会長はどこ吹く風の猫たち。

みずしな孝之「けものとチャット」は,竹書房『まんがくらぶオリジナル』にて連載,および『まんがくらぶ』にて季節連載中の作品。それほど猫は好きじゃないけど,猫としゃべることができる少女・毛野本茶々の,猫に囲まれるウンザリな日常を描いた作品。

2巻では猫好きの生徒会長と茶々の能力の双方が双方にカミングアウト。猫好きなのに猫に嫌われ,猫に幻想を抱くも茶々にことごとく幻想を潰される会長の姿が滑稽。猫たちの会話は相変わらず超現実的でどこか人間っぽさがある。この辺が普通の猫ラブ漫画とは一線を画すところかも。

近代麻雀に掲載された「けものとチャンタ」や,作者自身の猫体験「けものとしなっちょ」も収録。こちらもバカバカしくて面白い。

みずしな氏は現在,livedoor デイリー4コマでも「けものとチャット」を連載中。

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小笠原朋子『ウワサのふたり』3巻(完)

小笠原朋子『ウワサのふたり』3巻

ママが死んでここに来た時は あたしは世界一不幸だと思ってたけど

いつの間にか世界一幸せかもしれない

小笠原朋子『ウワサのふたり』3巻 p.100 「幸せ」

まさに幸せにあふれた最終巻。

小笠原朋子「ウワサのふたり」は,既に竹書房まんがライフオリジナル』での連載が終了した作品。売れっ子二枚目俳優の弓削誠(表紙右)と,その隠し子である小学5年生の佐倉一花(表紙左)の日常を描いた作品。

最終巻の今巻では,誠が一花のことを公表する。ここからの二人の周囲の人たちの温かさがたまらなく良い。誠のマネージャー,一花の学校の先生,お隣りに住むファンの奥さん……。みんなが二人のことを支え,応援する姿が胸に来る。

そして二人を始めとする全員が幸せな結末を迎える。最終話は隠し子公表から3年後の話。二人は堂々と街を出歩けるようになり,一花の先生・小島すずは誠との仲が進展,お隣に住む一花ラブのクラスメイト・渉は誠にライバル心を燃やす日々だ。唯一,一花だけが,好きだったマネージャー・矢部さんが結婚して失恋してしまったけど,その一花の姿も決して暗くはない。

物語の最後は,一花の母・千花の墓参りで終わる。不遇だった彼女,その恋人,そしてその娘の三人が始めて報われるシーンには,幸せな結末に対する作者の良心を感じずにいられない。

振り返ってみれば,最初から最後まで良心にあふれた作品だなあと思う。誰もが優しくて,誰もが好意的で,誰もが幸せな結末を迎える。現実にはきっとありえないんだろうけど,物語の中くらいはこうあったっていいじゃないか。

小笠原氏の作品は基本的に好きだけど,今作は今まで読んだ作品の中で一番好きな作品かも。ただ,双葉社誌の既刊作品はあまり読んだことがないから,今度はそちらを読んでみようかな。

今巻は単行本未収録&DXゲストを迎えた描き下ろしコミック小冊子プレゼント企画あり。単行本表紙についている応募券で応募可能。全員プレゼントのようなので,ファンの方は忘れずに応募すべし。

私屋カヲル「少年三白眼」3巻

私屋カヲル「少年三白眼」3巻

ヒロムの母「お母さん ヒロムの合格のためなら なんだってするわ――!!」

ハッキリいって ボクよりもお母さんのほうが燃えてるのだ

(私屋カヲル「少年三白眼」3巻 p.121より)

1992年から1993年にかけて小学館『別冊少女コミック』にて連載されていたストーリー漫画の単行本。竹書房からの新装版はこれが三冊目。三白眼の少年・阿久津ヒロムの、目つきの悪さゆえのドタバタな学校生活を描いた作品。単行本3巻は描き下ろしとして、作者がこの作品を振り返る漫画「ふりかえれこの15年」を収録。

3巻になると、ヒロムの三白眼ゆえのギャグは少なくなり、純粋な学校ドタバタギャグ漫画に。それでもやはり登場キャラが強烈で面白い。特にヒロムの受験の話で、ヒロムの母がヒロムよりも燃えている姿なんかは、彼を食ってしまうほどだ。

描き下ろし漫画では「少年三白眼」の連載の経緯や裏話、竹書房への投稿話、「ちびとぼく」連載から青年誌デビューなどが語られている。「ちびとぼく」が作者にとって「どんなマンガかいてるの?」ときかれた時の安全パイでもあるというのは、確かにそうかもと思ってしまった。「青春ビンタ!」も「さくら 咲いちゃえ♥」も「こどものじかん」も男性向けだからなあ。

ところで、p.43でちょろっと出てくるBSハンターという言葉。確か「ちびとぼく」でも使われていたよなあと思って調べてみたら、単行本6巻のp.42にBSハンター郷子なんてセリフがあった。狙って書いたとしか思えない。この辺にもちょっとニヤリとしてしまったり。

単行本1~3巻のイヌッパナTシャツプレゼントの応募締切は5月末。まだ時間はあるけど、応募される方はお忘れなく。

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重野なおき「GoodMorningティーチャー」7巻

重野なおき「GoodMorningティーチャー」7巻

上原「水野さんにはいつかもう一度友達として会いに行こうと思うんだ

そうだな 少しでも早く 思い出話にできるように…

校内新聞に載せてみました」

みんな(お前すげえよ上原ぁー!!)

(重野なおき「GoodMorningティーチャー」7巻 p.55 「強すぎるよ!!」より)

『まんがライフ』と『まんがくらぶオリジナル』にて連載中の4コマ漫画。熱血高校社会科教師、東進太郎のクラスの日常を描いた作品。単行本7巻のゲストは佐藤両々氏と山名沢湖氏。

7巻ではクラスの天才少年・上原が、彼の中学時代からの憧れの女の子・水野に告白。結局上原はふられてしまうけど、いつもはクールな上原が青春する姿には「本当、青いなあ」と思ってしまう。でもそれをただの青春話にするのではなく、最後にはきっちりとギャグにしてしまうところは、さすがは重野氏という感じ。

4月28日にはトライエッグから「GoodMorningティーチャー」ドラマCDが発売。サイトではCDの試聴が可能。

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樹るう「ポヨポヨ観察日記」2巻

樹るう「ポヨポヨ観察日記」2巻

萌「こ…これは 猫の子供がえり モミモミ!?

ポヨ… 私がお母さんでいいの…?

もういっくらでももんでー♥」

(樹るう「ポヨポヨ観察日記」2巻 p.50より)

竹書房『まんがライフ』と『まんがライフMOMO』にて連載中の作品。とにかく体が丸い猫・ポヨと、彼の飼い主一家の日常を描いた作品。単行本2巻には、増刊号『あにまるパラダイス』にて掲載された「そんな! ムーたん」もわずかながら収録。

ポヨへの多少行き過ぎた愛ゆえに、爆弾発言をしたり、あらゆる丸いものにポヨを見てしまう飼い主・萌の姿が相変わらず面白い。そんな姉に呆れ気味の弟・英との掛け合いも楽しい。安心して読める作品。

4月20日には、樹氏の単行本「私のお嬢様」1巻が辰巳出版から発売。こちらも4コマ漫画。私は読んだことはないけど、こちらの掲示板の梅さんによれば、王朝時代のロンドンを舞台に、大商家の一人娘に仕えるナースメイドが主人公の話らしい。

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